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あじろ けい

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【雑記】ありがとうございました ホラー編

別にお礼を言うのがホラーというわけではないです。

アルファポリス ホラー小説大賞が終了しました。参加作品「ずれる」を読んでいただいた方、拍手をしていただいた方、貴重な票を投じていただいた方、みなさまにお礼申し上げます。

ありがとうございました。

ホラー作品ということで、目標順位は13位でした。ホラーにふさわしく、不吉な数字ということで。今住んでいる場所も13番地だし。実家も13番地だし(苦笑)

しかしはるか及ばず、昨晩確かめたところでは42位でした。「死に」ということで、こちらもホラーらしく不吉な数字で、まあ、よしとします。いいのか? 

ホラー作品は正直言って書くのが心理的につらかったのでしばらく書かないと思いますが、そうはいっても夏がくれば怪談のようなものが書きたくなるかもしれません。
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テーマ:物書きのひとりごと
ジャンル:小説・文学

時効の闇 あらすじ

時効のせまる事件の解決を頼まれたスメラギ。一旦は断った事件に、思いがけないところから巻き込まれていく。
*時効があった頃のお話です。グロいですのでご注意ください。

sumeragi3

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

時効の闇 プロローグ

 「ひでぇな」と言いかけ、高砂次郎は口をつぐんだ。刑事課の刑事にとって「ひでぇな」とは、いわば挨拶のようなもので、特に意味はない。凄惨な事件現場を目の当たりにして「ひどい」と口に出して言うことにより、自分はまだ殺人現場を「ひどい」と思う感性をもちあわせているまともな人間だと、周囲と、何より自分自身にアピールするのだ。
 ぼろ雑巾のように切り刻まれた死体、壊れたおもちゃのように打ち捨てられた、かつて人間であったはずのもの。現場をこなすにつれ、それらが日常の風景と化し、テーブルに並んだ食器を眺めでもするかのように、死体をみても動じなくなるようになる。冷静なだけだと思いたいが、その実、慣れが人間性を磨耗しているのではないかと不安になる。
 ひょっとして自分も、平然と殺人を犯したものたちと同じ感性なのではないのか ― その恐怖心から、「ひどい」という言葉がいつしか口をついて出るようになる。「こんなひどいありさまを目のあたりにして、ひどいと思える俺はまだまともな人間だ」という意味だ。
 だが、その現場に足を踏み入れたとたん、挨拶がわりの「ひでぇな」という言葉は、高砂の喉の奥にひっこんでしまった。その場にいたものたちの誰もが言葉を失っていた。現場を撮影している鑑識班のカメラがたてるシャッター音だけが、まるで唯一生きているもののごとく、声をあげていた。
 冬の日差しがはいりこむ、あたたかくて明るい居間だ。ソファーにこしかければ、庭とテレビと両方とが視界に入る。フローリングの床はそのままダイニングへと続いていた。テーブルに椅子は4脚そろっていた。その先には台所があった。調味料や食料品の一部が表に出ていたが、きちんと整頓されて置かれてあり、雑然とした感じはない。黄色を基調とした台所は、その家の主婦の好みなのだろう。高砂は、美人ではないかもしれないが感じのいい、柔らかい微笑みを浮かべる女主人の姿を思い浮かべた。
 キッチンの床には、赤茶けたマットが敷かれてあった。明るいとはいえないその色合いは、壁や小物と色合いがそぐわない。近寄ってみると、それはマットではなく、乾ききって干潟のように所々がひび割れている血の海だった。潮がひいた海にぽっかりと姿を現している浮島は、かつて人間であったろう肉の塊だった。おそろしく巨大な肉の塊は殴りつけるような異臭を放っていた。
「頭部は?」
「まだ発見されていません」
「切断場所はここか?」
「血の量から判断して、おそらく」
 死体には首から上がなかった。切断面はすでに乾いて、背骨がのぼったばかりの満月のように白く浮き上がっていた。縞模様だったとおもわれる男物のパジャマは血を吸い込んで、赤茶色に変色していた。
「すいませんっ、ちょっと…」
 若い刑事が庭に面した窓から外へと脱兎のごとく飛び出していった。「おい、現場を荒らすなよ」と鑑識の声が飛んだが、聞こえているのかどうか、庭の隅で吐いていた。
 配属になったばかりの新任刑事、鴻巣一郎だ。
いつもなら、ベテラン捜査官たちが、殺人現場に気分を悪くしている若手刑事をからかうのだが、今日に限っては誰も庭にかがみこんでいる鴻巣一郎を相手にしようとしない。吐けるものなら吐いて気分をすっきりさせてしまいたい、高砂はじめベテランたちの誰もがそうおもっていた。
 戻ってきた鴻巣一郎は、すえた臭いをただよわせていた。安っぽいローションとあわせて、新人刑事のにおいだ。あと数件も殺人現場に居合わせれば、体が死臭に慣れる。体が慣れれば、感覚も麻痺して、そのうち無意識のうちに「ひどいな」という言葉が口をついて出るようになる。そのころには、すえた臭いは、歩き疲れた足元から漂うようになり、年がら年中水虫に悩まされるようになる。そうなったら、一人前の刑事だ。
「和室の母親は両足を、2階の寝室の奥さんは両手、子ども部屋の子どもは両足を切断されています。どれもまだ発見されていません」
「子ども?」
「まだ9歳の男の子です。9歳ですよ、ったく……」
 田所刑事はそう言ったきり、黙って天井を見上げていた。同じ年頃の子どもをもつ親として、犯人に対する憤りは、子どものいない高砂より強いのだろう。大きな目と受け口のひょっとこ顔の裏に、刑事ではなく父親の顔がのぞいてみえた。
 鴻巣をうながし、高砂は2階へとむかった。2階から降りてくる他の刑事は一様に黙ったまま、高砂たちにかける言葉はなかった。だが、すれ違いざまにうなずきあう男たちのまなざしが多くを語っていた。
「この犯人(ホシ)は必ずあげてみせる」 ― 戦いがはじまった。



 1月7日、xx区xx丁目坂井信行さん宅で、この家に住む会社経営、坂井信行さん(38)、妻の由紀子さん(38)、長男の徹くん(9)、同居していた母親の富子さん(68)が、死体で発見された。この日、新年の挨拶に訪れた兄の坂井圭介さんがインターフォンを鳴らしても返事のないのを不審に思い、近所の交番に連絡、かけつけた警察官とともに、変わり果てた姿の一家を発見した。警察の発表によると、死後10日以上が経過しており、死因は絞殺、遺体の一部が切断されていた。切断された部分はいまだ発見されていない。兄の坂井圭介さんによると、一家は昨年末の26日からハワイへ海外旅行に出かける予定で、6日には帰国しているはずだった。玄関先にスーツケースがそろえられていたこと、一家がパジャマ姿であったことから、出発前日の夜に殺害された可能性が高いと警察ではみている。庭に面した窓ガラスが割られており、犯人は窓ガラスを割って坂井さん宅に侵入、殺害に至ったものとおもわれる。遺体の一部を切断、持ち去ったとおもわれるが、現金や貴金属の類、車も紛失しているため、警察では、強盗と怨恨の両方の線から捜査を進めている。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

時効の闇 1-1

 雑居ビルの林立するなか、目指すスメラギ事務所は頭ひとつ打ち込まれて立っていた。師走の声も聞こえてこようかというこの時節、4階建てのビルの4階の窓は開け放たれ、「スメラギ探偵事務所」と読めるはずの案内が、「ス」に「メ」が、「ラ」に「ギ」が重なって、何ともおかしなことになっている。
鴻巣一郎は、薄っぺらなコートのポケットから一枚の名刺を取り出し、そこに書かれてある住所と名前を確かめた。

 スメラギ探偵事務所
 xx区xxビル4F

 全開の窓を見上げ、鴻巣はコートの襟をきつく閉めると、雑居ビルの階段をあがっていった。
 「スメラギ探偵事務所」と表札のかかったドアに手をかけようとすると、すりガラスのはめ込まれた木製のドアはきしんだ音をたててひとりでに開いた。みかけは古いビルだが、自動ドアとは、最新の設備を整えているらしい。 
 内開きに開いたドアをすりぬけると、つんと石油ストーブのにおいが鼻をついた。毛布を肩からすっぽりかけた白髪の老人が、背を丸めて、石油ストーブに両手をかざして暖をとっていた。
(よお)
「スメラギさんか?」
 振り返ったのは若い男だった。マフラーを二重三重に巻いてもまだ寒いらしく、紫色の唇を震わせていた。年頃は24、5ぐらいだろうか、短い髪を銀色に染めてハリネズミのように毛先をたてている。わざわざ染めなくても、年をとればいずれは白髪になるのになあと、鴻巣は、このごろ白髪のちらつきはじめた頭をくるりとなでた。
「俺に頼み事があるってか」
(まあな)
「ああ」
 鴻巣が警察手帳を取り出して身分を明かそうとする前に
「あんたも刑事か?」
 相手が鴻巣の正体を先に見抜いた。15年も刑事をやっていれば、警察手帳を首からさげているも同然か。1年しか続かなかった結婚生活で、妻は別れ際に「暗い目をしている」と言い、鴻巣のもとを去った。見合いで知り合い、人の裏の顔ばかりみてきた鴻巣とは正反対に物事の表だけを見る素直な明るさが気に入って結婚した。なごやかな家庭を望んだが、暗闇ばかりみてきた目には彼女の明るさはまぶしかった。人を疑うことを知らずに生きてきた彼女にとっても、鴻巣がそうと気付かずに家庭に持ち込む暗闇が恐ろしかったのだろう。
 「暗い目をしている」 ― 言われるまで自分では気付いていなかった。鴻巣の周りは誰もが「暗い目」をしていた。人が隠そうとするものをみようとする目。強面だろうと、女好きする顔をしていようと、顔つきにかかわらず、数年も刑事をやっていれば、みな一様に、人の裏側を見透かそうとする目つきになる。刑事の目だ。
 40すぎれば自分の顔だという。若いころは端正と言われたこともあったが、顔でもてたためしがない。端正とは、目鼻一そろい揃っているという意味合いだったか。40となった今では、目には見えないものをみようとする「暗い目」をした刑事の顔をしているのだろう。
 鴻巣の眼の前にいる白髪頭の若い男もまた、人の目にはうつらないものを見透かそうとする「暗い目」をしていた。同じ目をしている ― そのときはそう思った。だが、男の三白眼は、鴻巣が見ているものとは全く違うものをみるのだと知ったのは、後になってからだった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

【雑記】こどもの日が近いということで

こんな記事をみかけました。

子どもの施設養護、日本は9割近く 先進国で最高 HRW報告

報告を出した団体の代表の方のコメントには一部ひっかかる表現がありますが、子どもを家庭環境で育てるべきという意見には賛成です。でもだからといって、施設の存在を否定的にとらえるわけではありません。必要な人には必要なものだから。

家庭環境で子育てには賛成ですが、産んだ親のもとが必ずしもいいものとも思えません。産みっぱなしの親もいるので、そういう人からは子どもを取り上げたい気になります。産んだからって親の面するんじゃねーよと。虐待する人もいるし、そういう人のもとからは子どもを取り上げないと死んでしまう。そうやって死んでいった子どもたちがどれだけいるのか。こどもを生めば親になるとは限らない。

子どもを育てる意思のある家庭で、こどもには育ってほしい。強くそう思います。責任もって子どもを育て、社会に送り出すこと。人間が人間になるには15年から20年近くかかります。肉体の成長、精神の成長を促すそれだけの時間、こどもにむきあっていられること。私が思う理想の家庭です。だから、でき婚カップルは私ははっきり言って嫌いです。いろいろ事情はあるでしょうが、親になる覚悟もなく、準備もなしにこどもをむかえてしまって、責任ある子育てができるのか。学んでいく人もいるでしょうが、そういう人間ならはじめからこどもができるようなことをしていないと思います。偏見と言ってくださって結構。

カップルに婚姻の有無は関係ない。同性のカップルでも構わない。ひとり親でもいいですが、できたらふたりいた方がいいとは思います。できるだけ価値観の違う人間がいたほうがいいと思うので。こどもと一対一になってしまうのはさけてもらいたいんですよね。こどもが逃げたり拠り所にする場所がなくなってしまうから。

親となる人の意思と責任感、これが一番大事とおもいます。子どもの意思を尊重するという意見もあるけど、こどもっていうのはわがままで、ちょっと怒られたからって平気で親を嫌いになります。そんな時に誰と暮らしたい?なんて聞こうものなら、自分に甘い人間のもとでというに決まってます。そんなの受け入れられるわけがない。親は時にこどもに厳しくしなければならないのであり、こどもも叱られることを学んでいかないといけない。そうでないと自分が親になった時にこどもを育てられなくなってしまう。

とはいえ、家庭環境にもいろいろな問題はあります。離婚、経済問題……。里親制度について、虐待うんぬんの心配をされる人もいますが、そんなの、産んだ親のもとでも発生する問題です。産んだ親だから虐待しないという保証はどこにもない。むしろ産んだ親のほうがこどもに対する所有欲が強くて、自分のものだからどうとでもしていいという気持ちがあるんじゃないでしょうか。そんなの親じゃないです。もう一度いうけど、産んだからって親の面してんじゃねーよ、です。

さて、で、記事の中で里親制度の充実しているとされたオーストラリア。

里親のもとで育った人、里親としてこどもを育てている人、友人にもいますし、町でもみかけます。肌の色が違う場合はひとめでわかってしまうので、すぐにああ実子ではないんだなとわかります。でも、普通の家族です。何も変わりません。「娘が反抗期でね、まいっちゃうのよ」と愚痴る友人。本当に、産みの親と何ら変わりありません。教育熱心な家庭で、体育意外は成績優秀なんだとか(笑) 友人は家族写真を持ち歩いて、あーだこーだと娘自慢をします。繰り返しますが、普通の家庭です。

もっとも、オーストラリアで里親制度が充実しているのにはわけがあります。関連記事のリンクから飛んでいけますが、オーストラリア政府はかつて養子縁組を強制的に行ってきました。

オーストラリア政府、強制的な養子縁組みで初めて正式に謝罪

望まれない妊娠によるこどもを強制的に取り上げて養子に出したという話です。強制的に、という部分に引っかかりを感じるものの、未婚の女性がひとりで子育てができたかと考えたら、やむを得なかった措置だったかもしれないと思ってしまうのです。当時は戦後すぐのころです。男性でも仕事を探すのが大変だった時代。まして女性だったら。しかも子どもがいたら。社会保障制度も整っていません。しかもオーストラリアは今でこそ景気がいい方ですが、かつて何ども不景気を経験しています。友人カップルはそんな不景気な時期に結婚し、景気がよくなるまで子作りを控えていました。そんな時代です。そんな国の状況がありました。

出征証明書そのものからも実母としての名前を消されてしまったため、その後引き取ることができなかったという残念な事情はあるものの、強制的でもやむを得なかったのかなと。にしても、父親はどうした!(怒) 子どもができても結婚すらしなかったのかい!(怒)

強制的にこどもを取り上げたという点にひっかりつつも、実は強制的にでもしないといけない場合ってあるのかなとも思うのです。
またしてもオーストラリアの話ですが、住民のほとんどが社会保障で暮らしている地域があります。働いたことのない親のもとで育てられた彼らの子どもたちは働くことがどういうことがわかりません。親が働いていないから、自分も働く必要がないとおもっているのです。

この話を友人たちとしていたときのこと。問題を解決するには、親から子どもを引き離して別の場所で育てるかするしかないねという話になりました。親だけでなく、他のこどもの見本となる大人も働かないので親元から引き離すだけでは足りないのです。子どもたちに職業訓練を行ったとしても、家に帰ればぐうたら働かない親がいる。働くことがばかばかしくなってしまいます。親も働かなくていいと言うでしょう。親がそういうのだから子どもは素直に従うでしょう。解決の糸口がまったく見つかっていない問題です。

話戻って日本の事情。日本で里親制度が浸透していないのにはいろいろな事情があるようです。報告書では手続きの煩雑さがあげられていましたが、煩雑な手続きは簡略化することが可能です。難しいのは社会的な事情でしょう。それが感情に結びついているとなおさら難しい。

「日本では養子っていうと暗いイメージがあるらしいじゃない」

オーストラリアの知人に言われた台詞です。その人自身、養子です。

なんで暗いイメージがあるのか考えてみました。おそらく、産んだ親から捨てられたというイメージと結びついているのでしょう。親にしても産んだ子を捨てたという後ろめたい気持ちがあるんじゃないでしょうか。

捨てるとか捨てないとか……物じゃないんだから。何度もいいますけど、産んだからって親じゃないし。こどもは授かりものっていうけれど、私は預かりものだとおもってます。いずれ社会に返していくもの。日本だと一旦社会に出てから介護などで親元に戻ってきてしまいますが。これが問題かな。子どもを社会に手放していけないから、実子にこだわっているように思えます。いずれ自分の世話をするようにしつけるにはこどものうちに、それも幼いうちから、「面倒みてやったんだから面倒みろよ」的な考えをたたきこむ。マインドコントロールじゃないですか。

だーかーらー、子どもは親のものじゃねーっつの。おぎゃーと生まれたときから、もう別物なの。

日本の場合は制度うんぬんの前に、こどもとは何か、子育ての目標はというところから考えないといけないのかもしれない。

子連れ心中とか、産んだそばから殺すとか、虐待とか、そんな話、まっぴらなんです。手放してくれたようがよほどまし。っていうか、手放してほしい。

あ、珍しく長い雑記になってしまった。。

以上、いまだにこどもであり続ける私からの、こどもとしての主張でした。

テーマ:物書きのひとりごと
ジャンル:小説・文学

時効の闇 1-2

「鴻巣一郎だ」
 胸ポケットから警察手帳を取り出してみせたが、男は一瞥をくれただけだった。
「じいさんの知り合いか?」
(俺がまともな刑事にしてやった男だ)
 “じいさん”とは高砂刑事のことか。
 そもそも、鴻巣がスメラギ探偵事務所を訪れたのは、高砂刑事がきっかけだった。
 2か月前、鴻巣は、退職する高砂から1枚の名刺を渡され、どうにも事件が解決できないとなったら、名刺の男を頼れと言われた。名刺を受け取る鴻巣に、高砂は「実は、こいつが手助けしてくれたんだ」と耳打ちした。5年前、高砂は時効寸前の強盗殺人事件を解決した。スメラギという探偵がいなかったら、事件は時効となって犯人は自由の身になっていた、と高砂は言い、それ以上は詳しく述べなかった。
 高砂のくれた名刺を思い出したのは、1か月前、脳溢血で亡くなった高砂の葬式帰りのときだった。ふと誰かが「高砂さん、あの事件だけが解決できなくて心残りだっただろうなあ」と漏らした言葉がきっかけだった。
 その事件ならよく覚えている。刑事となって所轄の刑事課に配属されたばかりの頃に起きた事件で、一家全員が殺害され、遺体の一部が持ち去られたという異様な事件だった。残された遺体の状態や他の状況証拠から、事件発生は12月25日ごろと推定され、15年目の時効の日を間近に控えていた。
高砂の供養に事件を解決しよう、鴻巣はふとそう思った。それから1か月、捜査資料をひっくりかえしたが、犯人逮捕につながる手がかりはみつけられていない。事件は継続捜査となったが、担当でない鴻巣には、時間も人手も何もかもが足りなかった。時効まで1か月あまりとなり、どうにもならんと思い、捨て鉢な気持ちで名刺のスメラギ探偵事務所を訪れることにした。
 スメラギという探偵がどんな人間なのか、高砂が解決した時効寸前の事件にどうかかわったのか、何も知らされていない。鴻巣が持ち込もうとする同じく時効を控えた事件にどうかかわっていくのか、毒蛇の入った壷に手を入れる気分で、鴻巣は賭けに出た。
「高砂さんが、あんたなら何とかしてくれるだろうと言ってな……」
 だが、時効寸前の事件の解決を手伝ってくれと言い出すのがためらわれた。24、5の若造が、警察が手をこまねいている事件にどう貢献できるというのか。
(15年だ、12月で時効になる)
「また時効寸前の事件を頼むってんなら、断るぜ」
 白髪頭の男は人の心を読むらしい。薄気味悪い思いに、鴻巣は身震いした。
「なんだ、そっちは生身の人間か」
 そういうと、スメラギは石油ストーブからやかんをおろし、湯のみに湯気のたつ日本茶をそそいで鴻巣に差し出した。
「日本茶ぐらいしかねぇんだけどよ」
「ああ」
 湯気のたつものならこの際、何でもよかった。体が芯の底から冷え切っていた。事務所に足を入れたときからだ。換気のためだろうが、この寒空に窓を開けているから外から冷気が入り込んでくるのだ。忌々しそうに全開の窓をにらみつけながら、鴻巣は、かじかむ両手で湯のみを包み込み、熱い湯をすすった。
(頼むよ、スメラギ。あの事件を解決しないことにはおちおち死んでいられないんだ)
「なあ、高砂のじいさんから俺のこと何て聞いてきたんだ?」
「じいさんが解決した時効寸前の事件を手伝ったってな」
 そうとしか聞いていなかったので、そうとしかいいようがない。警察が手こずった事件を解決したというのだから、てっきり、凄腕の元刑事が出てくるのだとばかりおもっていたら、白髪頭の若造が出てきて、正直もう帰ろうかとおもっている、とは言えなかった。
「じいさんもくえねえやつだな」
(霊がみえる男に、被害者の霊と話をしてもらって目撃証言をとったなんて言えるか、アホ)
「ま、言ったところで、どうせ、年のせいでイカれたんだろうって、相手にしてもらえなかっただろうけどな」
(年のせいとは何だ!)
「お前、一体何者だ?」
「何者って、探偵さ。浮気調査とか迷いネコ探しとか、そんなことをやってる」
「どれくらいやってんだ、この商売」
 白髪頭は片手の指をゆっくり折った。
「そうだな……5年かな」
 高砂が時効寸前の事件を解決したのが5年前。ちょうどスメラギというこの男が探偵稼業に足を入れたころだ。今でも若いのだから、当時なら20歳そこそこだっただろう。鴻巣からしたら「ガキ」のような男に、警察ですら手に負えなかった事件がどう解決できたというのか。
(あれから5年か)
「そう5年だ」
(なあ、あん時のようにさ、今度もさっさと目撃証言をとって…)
「あれは珍しいケースだったんだ。普通は誰も残っていやしないし、おとなしく成仏しちまうんだよ」
(おれはどうなんだ)
「あんたは心残りがあるから、いつまでもうろちょろしてっけどな」
(だから、その心残りをだな…)
「無理だっつーの」
「おい、何を言ってんだ?」
 スメラギという男は、まるでそこに誰かがいるかのような調子でひとりごとを呟いていた。鴻巣は怖くなった。男の視線は、鴻巣の右隣に集中している。
「大体だよ、被害者の目撃証言が仮に取れたとして、どうやって証明すんだよ。『はい、刑事さん、被害者と直接話をして、こいつが犯人だとわかりました』なんて言って、誰が信じる? だからこそ、あんただって例の事件、あとで苦労したんだろ?」
(だから、こいつを連れてきた。おれは死んだ人間だからもうどうにも手が出せんが、現役の刑事のこいつなら使えるだろう。証拠なんて、後でどうとでもでっちあげりゃいいんだ。だが、そいつをやるには生身の体が必要だ。頼む、こいつを使ってあの事件を解決してやってくれよ)
「おい……?」
 ひとしきりしゃべったあと、スメラギはしぶい顔で黙りこんでしまった。
 湯のみはすっかり冷え切ってしまっていた。石油ストーブの働く音だけがする。やかんがカチカチ鳴り、湯気を吐いていた。
「なあ…鴻巣さん、だっけか。あんたが俺に頼もうとしていることはだな…殺された被害者と話をして犯人を割り出せってことなんだぜ……」
「はあ?」
「高砂のじいさんが例の事件を解決できたのは、俺がその被害者と話をして犯人を知ったからさ」
「……」
「信じるか、俺の話」
「ば、バカバカしいっ!」
 鴻巣はソファーを立ち上がり、入口のドアに手をかけた。だが、自動であるはずのドアは閉まったまま、押しても引いても開く気配がない。
「おい、ふざけるなよっ」
 声が裏返った。吐く息が白い。よくわからないが、本能がここから逃げ出せと命じている。
(頼むから、こいつを説得してくれ。おお、そうだ、俺がここにいるって言やあいい。そすればこいつだってお前のこと、信じるだろうよ)
「無駄だよ、じいさん。信じないやつには、はなから何を言っても無駄さ。所詮、人間は自分に見えないものは信じねえんだから」
 そう吐き捨てると、スメラギはドアノブをひねった。鴻巣がどうにも開けられなかったドアは簡単にビルの廊下にむかって開き、鴻巣はその隙間に体を入れ、逃げ出すように事務所を後にした。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

時効の闇 補足

時効の闇 1-1 と 1-2を、反転させてみてください。

うっすらとしていた文字が浮かびあがってくるとおもいます。

スメラギの事務所にいた高砂の霊の台詞です。

そこにいるのにみえないものを体験してもらいたく、文字を白抜きにしました。バックと同じ色とはいかなかったのでうっすら見えていたかもしれませんが。

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時効の闇 2-1

 「何で行かせたんだっ!」
 ドアをさえぎり、鴻巣を外に出すまいとしていたのは、死んだ高砂の霊だった。鴻巣とともに事務所を訪れ、ドアを開けたのも高砂だ。
事務所にいるときは霊視防止の紫水晶のメガネを外しているため、鴻巣も高砂も、スメラギの目には霊体とうつってみえ、そのつもりで会話していたら、鴻巣は生身の人間だとわかった。霊体がそばにいるとやけに冷える。そうでなくても12月はすぐそこに迫っていて寒くなっているというのに、かわいそうに、鴻巣は、その魂が肉体を抜け出しているのではないのかというほど白い息を吐いて震えていた。
鴻巣はスメラギの正体について何も知らされていなかった。スメラギには、この世の生きた人間と同じように死者の姿がみえる。生まれつき髪が白いのは、その特異体質と何か関わりがあるのかもしれない。霊を見、霊と話ができるスメラギは、この世に心残りのある霊たちの頼み事をきき、あの世へ送り届ける仕事をしている。
「じいさん、あんたも死んだ今ならわかるだろ。生きた人間には生きた人間の、死んだ人間には死んだ人間の世界がある。生きた人間は死んだ人間の世界にかかわれないし、死んだ人間も生きた人間の世界に、顔だの足だのつっこめねえんだよ」
「それじゃなにか、お前は、俺におとなしく死んでろってのか。死んだ、殺された人たちも黙って死んでろってのか。それじゃ、それじゃあ、殺され損じゃねえか!」
「言ったろ? 死人には死人の世界とルールがある。犯人はいずれ地獄で裁きを受けるさ。殺人なら、自分が相手を殺したのと同じ方法で殺され続ける、それが地獄のルール、死人のルールだ」
「そんなら、犯人が死ぬまで待ってねえとなんねえじゃねえか。それまではのうのうと生き続けるのか? そんなの納得いかん。生きているうちに罪をつぐなうべきだろう?」
「それは生きている人間のルールが決めるこった。だから、警察があるんだろう? 警察ががんばればいいこった」
「それができてりゃ、俺は死んでまでお前のところに頼みに来たりしねえっ!」
「悪いが、犯人探しは俺の仕事じゃない。俺の仕事は、心残りの解消ってやつさ」
「じゃあ、これは仕事だ。俺の心残りはあの事件を解決できなかったことだ。お前、俺の心残りを解消しろ! あの事件のホシをあげろ!」
「ケーサツじゃないから、それは無理」
「だって、おまえ、5年前のときは…」
「あれは俺の個人的事情が絡んでたからな」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

時効の闇 2-2

 5年前、20歳になったばかりのスメラギは住む家を探していた。成人したとたん、親の役目は果たしたからと父親に家を追い出され、当の父親もまた家を売り払い、放浪の旅に出てしまった。しばらくの間、幼なじみの美月龍之介の家にやっかいになりながら、皇(すめらぎ)の家を売るときに世話になった不動産屋を介して、おんぼろアパートの六畳間を借りた。金のない学生が多く住んでいるアパートで、スメラギの部屋では以前に学生の自殺者が出た。もっぱら「出る」という話で借り手がつかなかったのを、スメラギがただ同然の家賃で借り受けた。
父親と付き合いのある不動産屋は、スメラギの霊視能力を承知していた。この不動産屋が、霊がいるかどうかを見て欲しいとスメラギに頼みこんできた。
物件は雑居ビルの4階、現在スメラギが事務所として使っているその場所だ。
かつて小さな会計事務所が入っていたその場所で、15年前、強盗殺人事件が起きた。留守番をしていた3人の女性事務員が全員殺され、金庫の現金が盗まれた。事件が解決されないまま時が過ぎ、会計事務所は立ち退いたが、その後に借り手がつかなかった。事件は大きく取り扱われたため、殺人事件があったビルだと知らないものはいなく、殺された被害者たちの幽霊が出るという、まことしやかな噂があった。その噂は、家賃の安さに惹かれたテナントが3か月ももたずに出て行くという事が引き続いて起こって裏づけされた格好になった。誰もいない事務所で、キーを叩く音がする、無言電話がかかってくる、机の上のものの配置が変わるなど、不可解な出来事が続き、とうとう借り手がいなくなってしまった。
強盗殺人事件の被害者たちの幽霊が出るというその場所に行き、はたして幽霊がいるのかどうか見てくれないか ― それが不動産屋の頼みだった。
スメラギが見たのは、2人の女性たちだった。ともに20代前半ほど、強盗事件の被害者たちと年代が一致する。自分たちが殺されたと信じられず、死神が魂の回収にやってきたとき、とっさに身を隠し、あの世へ行き損なってしまった。スメラギは、2人にあの世に旅立ってもらおうと、死神を呼び出した。
だが、2人は死神に連れられてあの世へ行くことを承知したものの、犯人が捕まるまではこの世にとどまり続けるといってきかない。では犯人を知っているのかと聞けば、2人とも知らないという。
「知らないというのは、まったく見知らぬ人か」と聞くと、「顔は知っている」と人が口をそろえて言った。
「じゃあ、知り合いか」と聞くと、「知り合いではない」という。顔は知っているが、名前は知らない。会計事務所の顧客でもないという。それで「顔を知っている」とはどういうことなのか。
「ビルの外壁の塗り替えをしていた人だ」 ― と誰かが言った。外壁の塗り替えが終わった一週間前までビルに出入りしていた男で、顔は見知っているが、名前は知らない。それでも手がかりには違いないだろうと、スメラギは警察へ匿名で情報を入れた。だが、警察はすぐには動かなかった。というのは表向きにはそう見えただけで、実際には高砂刑事をはじめとした当時の担当刑事たちがスメラギの情報に色めきたった。事件当初から、その男には疑いがかけられていたが、これといった証拠がなかった。
 高砂は事件現場となった雑居ビルの4階を訪れた。事件当時、壮年だった高砂の頭はさびしくなり、階段をあがる足の節々が痛んだ。
 事件現場を訪れた高砂は驚いた。事件から15年近くが経っているというのに、現場は当時そのままに保存されていた(実は事情があってスメラギがそうしたのだが、この時の高砂はその事情を知らない)。
 応対に出たのは、白髪の若い男だった。高砂と男は、簡単な世間話をした。男は事件を知っていて、自然と会話は事件のことになっていった。そのうち、高砂は奇妙なことに気付いた。男の年齢はどうみても20歳前後、事件当時は5歳ぐらいだろう。新聞などで事件を知ったにしても、やたらと詳しい。きわめつけは、男の放った一言だった。男は「ひどいもんだよね、ドライバーで刺し殺すなんて」と言ったのだ。
 凶器は特定されていたが、公表はされていない。犯人でしか知りえない情報を、なぜこの白髪の男が知っているのか。
 高砂が問い詰め、スメラギはとうとうすべてを告白した。
 「信じないだろうね―」
 捨て鉢にスメラギはそう言ったが、高砂は信じた。年をとって、奇妙な現象のひとつやふたつ経験していたからか、あるいは超常的なものを信じたいという気持ちがあったからか。長い警官勤務を経、解決に至らない事件に出くわすたびに、被害者=死者にむかって知っていることがあったら話してくれよと祈ってきたからかもしれない。
「なあ、頼むよ、スメラギ」
 一家惨殺事件の被害者の霊と話をして犯人を捜しだしてくれと頼む高砂が深々と頭を下げ、禿げ上がった頭頂部を眼の前にしながらも、スメラギは首を縦にふろうとはしない。
「じいさん、何だって、その事件にこだわるんだ」
 もしや引き受けてくれるのかと、高砂は期待に顔をあげたが、スメラギの渋い表情に、期待は泡と消えてしまった。
「葬式で、みちまったからなあ……」
 高砂の目には、今もそのときの光景が目に焼きついている。出棺のとき、ひときわ周囲の涙をさそったのは、小さな棺おけだった。わずか9歳で凶行の犠牲となった一家の長男、坂井 徹の遺体が納められた棺おけだ。その遺体には両足がない。
 軽々と運ばれていく小さな棺おけの小さな遺体は、軽々しく扱われた命そのものだった。必ず犯人をあげてみせる ― 目頭をあつくさせながら、高砂は固く心に誓った。
「じいさん。じいさんの悔しい気持ちはわからないでもないけどさ。事件のことはあのおっさん刑事にまかせときなよ」
「……」
「ああっと、いっとくけど、自分が死んだからって、被害者の霊とコンタクトしようなんて思うなよ。大概は生まれ変わっちまってるし、そうなると昔のことは覚えてねえしな」
「そうなのか……」
「言ったろ。死人には死人の世界とルールがある。あんたは死んだばっかりで何も知らねえだろうけどな。余計なこと考えてねぇで、おとなしくあの世へいっときな」
 高砂の魂をあの世へ連れていってもらおうと、スメラギは死神を呼び出すべくケータイに手を伸ばした。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

時効の闇 3-1

 被害者と話ができるってんなら、警察はいらねえや―
 調書のコピーをくる鴻巣の手が荒れている。
 高砂は何だってあんなインチキ霊能者なんかにひっかかったんだ。幽霊なんか、いるわけないじゃないか、子どもじゃなるまいし、いい大人が、しかも還暦過ぎのベテラン警察官ともあろう人が、「被害者と話ができます」なんて眉唾話に何でのせられたんだか。
 「霊がみえます」だの「霊がこう言ってます」だのというものは、心理トリックってやつだ。インチキ占い師が使うのと同じ手口だ。「悩みがありますね?」って聞かれたら、それは誰だって大小の差はあれ、悩みはある、「はい」って言うだろう。
 「霊がいる」と言われたら、信じるものは「それはきっと亡くなった母です」とか何とか口走ってしまう。そうなったらしめたもの、「亡くなったお母様がうんぬん」と勝手に話を作ればいい。どうせ真実なんて確かめようがないんだから、でたらめ言ったってバレやしない。先方は、自分が母親だ、って答えを言っちまったことなんかすっかり忘れて、霊能者ってやつが母親の姿をみた、と勘違いしてくれる。そういう仕組みだ。
 なんで、還暦過ぎた人生経験豊富な高砂がそんな簡単なこともわからなかったのか。
 刑事としても、人としても、鴻巣は高砂を尊敬していただけに、子どもだましのトリックに騙されたのが自分の肉親のような気がして、やたらと腹立たしい。
 高砂は昔かたぎの刑事だった。犯罪者も人の子だ、が口癖で、現場をなめるように確かめるのと聞き込みがその捜査手段の主だった。どんなにうまく証拠を消したつもりでいても、所詮は人間のすることだ、犯人は必ずナメクジのはった後のような痕跡が残している、そう鴻巣に教え、被害者の人間関係、現場の周囲の聞き込みを徹底するよう、叩き込んだ。ぬめぬめとした人間関係をあらっていくうちに、犯人や犯人につながる事柄に出くわした。
 容疑者と思われる人物にたどりついたら、高砂は食らいついて離れなかった。犯人も人の子なら、こちとらも人間だと言って、徹底的に向き合った。自分の犯罪を自慢したくてしょうがない腐った野郎には、そのねじまがった自尊心をくすぐって自供させてやったし、こいつには一言言っておいてやらないといかん、という犯人には説教たれた。殴られる痛みを知らなかった若者を殴りつけたこともあった。涙もろくて、犯罪に走らざるをえなかった事情をかかえた犯人に同情して泣いたりもした。いい年をして、感情の起伏が激しく、いい意味で大人でない人だった。
 それでも社会常識はあったろうに、そんな高砂が何故インチキ霊能者に騙されたりしたのか。
 殺された被害者と話ができるなんてこと、まともに受けていられるものかと、鴻巣は憤然たる思いで、かつての調書の写しをめくっていた。何か見落としているものはないか、犯人につながるものがあるとすれば、それは必ず調書にあるはずだ、当時見過ごされてしまった何かが。被害者の霊と直接話をすれば、簡単に犯人が逮捕できるではないかなどと考えるのはバカげている……。

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