Profile

あじろ けい

Author:あじろ けい

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
参加ランキング


にほんブログ村 小説ブログへ

素材サイト様
和風素材×フリー和柄素材 ネオ ジャポニズム
ホームページ作成用のサイケデリック調の和風素材や和柄素材、浮世絵調のフリー素材やデスクトップ壁紙のサイト
web*citron
シンブルで可愛い素材
十五夜
和素材の宝庫

無料写真素材フリー「花ざかりの森」
日本の森の美に感嘆
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

渡せなかった手紙 3-1

 “宮内小夜子”と札のかかった病室を訪れ、スメラギはがっかりせずにはいられなかった。
 死人の最期の頼みをきく仕事をしているスメラギは、宮崎老人のこの世での心残り、戦友・柏木孝雄から託された恋人・宮内小夜子への手紙を渡す依頼を受けた。
 何しろ60年以上もの年月を経ているので、手紙の住所はあてにならない。生きているかすらもあやしいところだ。そうおもったスメラギは、死人の側から”宮内小夜子“捜しを始めた。
 生きとし生けるもの、死んだもの、この世とあの世のすべての魂を記録した、地獄の鬼籍データによれば、“宮内小夜子”と名乗る人物は3人。地獄に落ちた1人目は、スメラギの捜す“宮内小夜子”ではなかった。
 2人目の宮内小夜子は一週間後に老衰で88歳で死ぬ予定になっていたが、ベッドに寝かされた状態の宮内小夜子は生きているとは名ばかりの状態だった。
 すでに意識はないのだろう、人工呼吸器を取り付けられ、見舞いの花に隠れた心電計がくりだす規則正しい機械音だけが、かろうじて宮内小夜子の肉体が生きていることを告げていた。
 生きていれば、かつての恋人、柏木孝雄からの手紙を渡してそれで終わり、のはずの仕事だった。
 死んでいれば、これまた、柏木孝雄からの手紙を預かっていると言って渡して任務完了、のはずの仕事だった。
死んだ人間とならば話のできるスメラギだが、生きている人間とはその肉体が機能していない限り、話ができない。
 死ぬのを待つか―
 病室を後にするスメラギと入れ違いに若い男が病室へと入っていった。男は宮内小夜子のベッドのかたわらに腰をおろし、意識のない宮内小夜子に話しかけていた。家族なのだろう、年のころからいうと孫だろうか。
 待てよ―
 家族なら、柏木孝雄につながる何かを聞きだせるかもしれない。宮内小夜子から何かを聞いているかもしれない。
 廊下の角を曲がりかけたところでスメラギは、病室へと引き返した。
 と、スメラギよりも先に病室へと走っていく2、3人の人があった。看護師と医者だ。彼らは慌てた様子で宮内小夜子の病室へと駆け込んでいった。スメラギも後を追った。
 心電計の甲高い音が病室中に響きわたるなか、宮内小夜子は蘇生処置を受けていた。寿命が尽きるまであと1週間はあるはずだが?と、スメラギはあやしみながらベッドへと近寄っていった。
 霊視防止のための紫水晶のメガネを鼻頭に少しずらすと、医者や看護師たちの間に立っているパジャマ姿の老女がみえた。肉体を離れた宮内小夜子の魂が死んだ自分をベッドに見下ろしていた。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。