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あじろ けい

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渡せなかった手紙 3-2

「あなた、お迎えの方?」
 宮内小夜子はスメラギの見事な白髪をじっとみつめた。天使にでも間違えられたのだろうか。
 スメラギは首を横に振った。
「私、死んだのかしら?」
 宮内小夜子の姿は誰にも見えず、声は誰にも聞こえていない、スメラギをのぞいては。
 スメラギがうなずいてみせると
「何だか変な感じねえ」
 老婦人は少女のように軽やかに笑った。ベッドでは必死の蘇生処置が続いている。
「寿命はまだあるから、助かるぜ」
「そうなの……」
 喜ぶかとおもったら、老婦人は少しがっかりした様子だった。
「あれはものすごく気持ちが悪いの」
 老婦人は人工呼吸器を指さした。
「無理やり空気を送りこんできて、苦しいったらありゃしない」
「1週間の我慢。1週間したら死神が迎えにくる」
「私、はじめ、あなたが死神だとおもったのよ」
 老婦人の視線がふたたびスメラギの白髪の頭にむいた。
「これは生まれつき、死神は葬儀屋みたいな恰好の無愛想なやつ」
「あなたは、生きた人間?」
 スメラギはうなずいた。
「見えないはずのものが見える特異体質」
「少し前にも来ていたわね。死神でないなら、私に何か用があったの?」
「柏木孝雄という人を知っていますか?」
 老婦人は、ほんの少しの間、考えをめぐらし、いいえと答えた。
「不思議ねえ。物忘れがあんなにひどかったのに、今はいろんな事がはっきり思い出せるわ。体も何だか軽くなって楽になった気がする」
 老婦人は透き通った手足を軽やかに動かしてみせた。足がわずかに地面から浮いて、両手を羽ばたかせたらそのまま空へと飛んでいきそうなくらいだ。
「もう戻ったほうが。家族が呼んでる」
「あの機械、気持ち悪いんだけれど……」
 医師と看護師は必死の処置、その傍らでは青ざめた頬の若い男が、小夜子の耳元にむかって「ばあちゃん!」と呼びかけ続けていた。
「私、このまま死んではいけない?」
 スメラギは黙って首を横に振った。
「家族ときちんと最後のお別れをしないと。このまま逝ってしまったら、あなたも家族も後悔する」
 自分の孫と同じぐらいの年齢のスメラギに諭され、老婦人は「それもそうね」と言い残し、ベッドに横たわる自分の体の上に覆いかぶさったかとおもうと、煙のようにかき消えていなくなった。
 と同時に、老婦人の体につながれた心電計が再び規則正しい間隔を取り戻して鳴り始めた。意識を取り戻し、うっすらと目を開けた宮内小夜子老婦人は、スメラギにむかって微かにうなずいてみせ、スメラギもまた笑顔を返してその場を後にした。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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