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あじろ けい

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ずれる 1-4

 編集長がいなくては仕事もはかどらない。その日は結局、夜の11時ごろまで残業し、祥子は久々に電車で帰宅した。
 金曜の夜とあって酔った客が多かった。酒くさい息の電車を降り、駅のホームに立つとひんやりとした空気に包まれた。とはいえ、夜気の寒さに険がなくなりつつある。この分では桜の開花宣言もじきだろう。早くシャワーを浴びてゆっくり寛ぎたいと、祥子は帰り道を急いだ。
 コンビニに寄って弁当を買ってくると、マンションの入り口で風間婦人に出くわした。小腹が空いて夜食でもと思ったのか、スウェット姿のラフな格好で、手には祥子と同じコンビニのレジ袋があった。目があうなり、祥子は軽く頭を下げた。
 ゴミだしを注意されて以来、どうやら自治会長に告げ口したらしい風間婦人を忌々しく思わないわけではなかったが、態度に出すほど子どもではない。顔を見れば会釈はしてきたし、相手も愛想よく挨拶し返してきたのだが、この夜はいつもと様子が違った。
 祥子を見るなり、風間婦人は魔物にでも出くわしたかのような勢いでマンションに入っていった。ちょうどエレベーターが一階に降りていたらしく、乗り込むなりさっさとドアを閉めて上がっていってしまった。同じ階の隣人だから待っていてくれてもよさそうなものをと、祥子は正直、不愉快に思った。
 風間婦人の気に障るようなことを言ったかしたりしただろうかと思い巡らせるも、思いあたる節は何もない。トラブルらしいものといえばゴミ出しの問題ぐらいだが、この1か月は夜のうちのゴミ出しが出来ないでいる。と考えて、祥子は今朝のゴミ出しを忘れていたと思い出し、憂鬱になった。
 ゴミの山にさらなる塵をつもらせるコンビニ弁当を手に祥子は玄関の戸を開けた。しかし、そこに築かれてあったはずのゴミの山はきれいさっぱり片付けられていた。出し忘れたとばかり思っていたが、どうやら早起きして出しておいたらしい。寝ぼけていて出したことも忘れてしまったようだ。
 しっかりしろとばかり、祥子はげんこつで頭を二度、三度こづいた。テレビでもパソコンでも、調子の悪い時には叩くと不思議と調子を取り戻す。頭も叩いておけばゆるんだねじがしまるだろうと、祥子は根拠のない期待を抱いた。
 遅い夕食の弁当を食べながらテレビでもみるかと、祥子はスイッチを入れた。夜遅い時間なので音量は控えめにし、それとなくベッドの接する壁をうかがう。バルコニーから明かりは漏れていないところをみるとどうやら風間婦人は寝てしまったらしい。しんとした空気が壁越しに伝わってきた。寝ているというよりは息を殺して祥子の様子をうかがっているようにも感じられる。そう思うなり、隣人が気になっているのは自分の方ではないかと祥子は我ながらあきれた。
 弁当を温めようとレンジに入れ、スイッチを押す。ピッピッピと電子音が鳴ったとたん、タイミングを見計らっていたかのように重低音が聞こえてきた。ズッズッ、ドッドッと、まるで巨大生物の心音のような規則正しいリズムで、風通しのために開けたバルコニーの窓ガラスが震えている。
 また隣の女が音楽をかけはじめたのだ。女はこの冬に越してきたばかりで、火曜日と金曜日の夜になると決まって大音量で音楽を聞き始める。しかも夜といっても8時9時といった浅い時間ではなく、11時、12時と夜更けてからである。横になって休もうかという時間帯だがとてもではないが寝ていられない。
 一度音楽がかかると1時間ほどは鳴りやまない。祥子は開け放していた窓を腹立たしい思いで閉めた。
 テレビでは古い洋画が放送されていた。日本語の吹き替えはしかし、隣の音楽にかき消されて何を言っているのかまるで聞き取れない。かといって音量を上げれば、風間婦人からうるさいと文句を言われるのは祥子の方だろう。理不尽だと思いつつ、祥子はテレビを見るのを諦め、スイッチを消した。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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