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あじろ けい

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ずれる 4-2

 健一とは、祥子から誘って男と女の関係になった。
 初めて体を重ねた夜、祥子は二階堂とのことを健一に打ち明けた。
「私、汚い女なの」
 健一は怪訝な顔をしてみせた。
「奥さんのいる人と付き合ってた――軽蔑するでしょ」
 東京をひきあげて地元へ戻ってきた理由を、体を壊したからだと親についていたのと同じ嘘を祥子は健一に聞かせていた。
「壊したのは体じゃなくて心なの。それで――」
「帰ってきたんだ」
 健一はベッドの上に裸の上半身を起こし、膝を抱えている祥子に居並んだ。
「不倫相手の奥さんに変なメール送ったり、近所の人に嫌がらせしたり……。全部自分がしたことなのに、鏡の中の自分が勝手にしたことだと思いこんでいたの」
 祥子は、鏡の像がずれて見えたことを告白した。頭のおかしな女だと思われるだろうと恐れはするものの、そう思いたければ思えばいいと祥子は捨て鉢な気持ちにさえなっていた。失うのなら早いほうがいい。身をさらした相手に、祥子は心もさらしてしまいたい気がしていた。
 知っているだけの事実を的確に伝えようと言葉を選んで時折黙り込む祥子の話に、健一はうなずくだけで口を挟まずに聞き入っていた。
「人のせいにしたかったんだな。そうすれば楽だから」
 健一は、鏡の像が別に存在するという考えをそれとなく否定してみせた。悦子と同じ反応だった。今は祥子も、鏡の像が自分の真似をしているだけなどという考えはバカげたものだとわかっている。
「ごめんね……」
 祥子は顔を両膝の間にうずめ、小さく頷いた。
「なんで謝るんだよ」
「こんな女だって知ってたら、寝なかったでしょ……」
 鏡はなくとも、祥子にはもうひとりの自分の声が聞こえた。他人のものを盗ろうとした薄汚い女。そんな女は幸せになろうとしてはいけないのだ。だが、祥子はそんな声を無視して、健一に抱かれた。一時でも構わないから、罪のない悦びを感じたかったのだ。だが、悦楽の後に祥子を襲ったのは激しい罪悪感だった。健一を騙した、そんな声が聞こえた気がして二階堂との過去を告白してしまっていた。
「そいつとはもう終わったんだろ?」
 顔を伏せたまま、祥子はうんと小さく呟いた。
「じゃあ、もういいじゃないか。俺は祥子が好きだから、寝た。ずっと抱きたいと思っていたんだぞ――」
 健一のたわしのようなあごひげが祥子の背中をくすぐった。
「祥子は汚くなんかない」
 そういって健一は祥子を背中から抱きかかえた。いつの間にか、呼び名がハチから名前に変わっていた。
「祥子は悪くない。悪いのはその男のほうだ。結婚していたのなら、男が踏ん張って誘惑を振り切らないといけなかったんだ。祥子、自分を責めるな」
 健一の両腕がきつく絡んでほどけなかった。窒息しそうになりながら、祥子は健一の思いを懸命に受け止めた。生まれ変わるとはこういうことなのかもしれないと、健一に抱かれながら祥子は涙した。



 健一が寝入ったのを確かめ、祥子はそっとベッドを抜け出した。バッグをさぐって携帯を手にすると、しなれた動作で留守電の画面へとむかう。メッセージを本当に削除するかという確認画面が出たのもつかの間、祥子はメッセージを削除した。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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