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時効の闇 4-2

 街も年をとるものなのか。十数年ぶりに訪れた富士見台は、その厚みを増していた。街路樹は歩道を覆いかぶさるほどに成長し、改装されていたり、二世帯に姿を変えているとはいえ、住宅街であるには間違いなく、今も庭に佇む植木の太さが年月を物語っていた。
 事件を過去に置き忘れて成長し続ける住宅街でひときわ目立つのが、現場となった坂井家だった。傷痕を人の目にふれさせまいとするかのように、ブルーのビニールシートに覆われ、外壁を取り囲むようにして足場が組まれている。ビニールシートの上から、リフォームを手がける工務店の名前を掲げた垂れ幕が下がっていた。
 事件現場に立つと、一気に過去の記憶が戻って、胸糞悪くなった。あの時嗅いだ死臭が記憶の底からたちあがってくるからではない。幼い子どもまで手にかけ、両足を切断すると残酷なことができる人間がいる、そのことに気分が悪くなる。いっそ、犯人が妖怪でも化け物であれば、異形のもののすることだと気持ちを切り替えられるだろうに、殺人鬼が自分と同じ人間であるのはやりきれない。
 坂井家を眼の前に、鴻巣は考えをめぐらした。
 犯人は強盗を装った。強盗を偽装する犯人として動いてみろ。
 盗みに入るなら、どこから入る?

1fmadori

2fmadori



 人目につきやすい玄関はありえない。ピッキングという手もあるが、玄関の鍵穴にはいじられた痕跡がなかった。第一発見者の兄が、鍵は閉まっていたと証言している。だからこそ、庭へまわって遺体を発見することになったのだ。
 庭の窓はどうだ。指の先を入れられるほど雨戸が開けられていて、内側の窓は割られていた。だが、ガラス片は内から外にむかっていた。これは庭からの窓を侵入経路と思わせるための偽装だろう。鴻巣はひとまず庭の窓をやりすごし、家の裏側へとまわった。
 隣家の庭に面した裏側には、窓が2つと勝手口が1つある。
 角を曲がってすぐにあるのは台所の窓で、通り抜けようと思えば大人ひとり通り抜けられないこともない。雨戸はなく、覗き込むとシンクがみえた。この窓から侵入したかもしれないが、窓ガラスの鍵は壊されていなかった。
 勝手口は、事件発覚当時、施錠されていた。隣家の庭に面しているとはいえ、この勝手口から入れば人目につかないものを、なぜ犯人は勝手口に目をつけなかったのか。
 勝手口となりの小窓は、浴室の換気用のもので、人が通れるほどの大きさはない。そのうえ、鉄柵が取り付けられている。
 浴室のとなりには、同居していた母親が寝起きしていた和室の窓がある。大人ひとりが余裕で通り抜けられる大きさがあるが、事件発覚時に雨戸と窓ともに内側から施錠されていた。
 和室の角をまがると、駐車場へ出る。事件発覚当時、あるべきはずの車がなくなっていた。坂井家を訪ねた兄は、買い物にでも出ているのだろうかとおもい、近隣の住人は、まだ旅行から戻っていないからだとおもっていたのだが、その後、車は発見されていない。
 駐車場には雨よけの屋根がしつらえてあり、屋根を支える柱をのぼれば2階の子ども部屋の窓に手が届く。
 2階は、梯子でも持ってこない限り、とりつくしまがない。駐車場の屋根をつたって子ども部屋の窓から侵入という手も考えられるが、それでは人目につくし、時間がかかってしまう。やはり1階のどこかから入るしかない。
 自分が坂井家に盗みに入るとしたら、どこから入るか。
 鴻巣は勝手口を選ぶ。隣家の庭は目隠しに椿が植えられてある。小学生ぐらいの背丈だが、ドアノブをいじろうとしゃがんでしまえば大人とはいえ、すっぽり隠れてしまう。ピッキングには格好の場所だ。
 だが、勝手口の戸は施錠されていた。
 犯人が強盗を装ったのなら、なぜ、侵入・脱出経路としてもっとも適当な勝手口の鍵を開けておかなかったのか。
 疑問はまだある。当時、雨戸は1階も2階もすべて閉まっていた。唯一、居間の庭に面した窓の雨戸が数センチ開いていただけだ。窓ガラスは内側から割られていた。そこが侵入・脱出経路だといわんばかりにだ。犯人が何ものであれ、どういう意図をもって、庭の窓が新入・脱出経路だとおもわせようとしたのか。
 そして、この割られた窓ガラスの細工ゆえに、捜査本部は強盗説を捨て、怨恨説をとった。
 犯人は、客として坂井家に入った。犯行後、強盗を装うため、部屋を荒らし、あたかも外から侵入してきたかのようにみせかけるために窓ガラスを割ったが、部屋の中から割ったため、庭先にガラス片が散った。窓ガラスを割ったことで満足し、ガラス片の行方にまで気がまわらず、犯人は割れた窓ガラスから脱出、雨戸を閉めて坂井家を後にした。
 庭先の雨戸をのぞくすべての侵入可能個所が施錠されていたことから、この仮説は打ちたてられる。
 窓から外へ出たというのは、ほぼ間違いないだろう。
 だが、強盗を装うのなら、勝手口の鍵を開けて外へ出ればいいだけの話だ。客として招き入れられる、犯行、強盗偽装、勝手口から外で出る、勝手口の鍵は開けたままでいい。最も侵入経路としてふさわしい勝手口が開いていれば、捜査本部もあるいは強盗説にもう少しこだわったかもしれない。
 犯人が、内側から割ってしまうというヘマをおかしてまで庭の窓にこだわった理由が何かある。しかし、それが何か、鴻巣にはわからない。いや、誰にもわからないから、今の今まで犯人は捕まっていないのだ。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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