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あじろ けい

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時効の闇 6-2

 土居の留守番メッセージを子守唄に鴻巣が寝入ってしまったその頃、スメラギのケータイが鳴った。電源を切っていても鳴るのは、閻魔王こと夜摩からの連絡だ。無視しようがないと、スメラギはしぶしぶ出た。
「おい、何時だとおもってんだよ。お前らと違ってこちとら人間には睡眠というものがだな……」
 窓からは静かな明かりが漏れ入ってきた。いつの間に振り出したものか、雨が降っており、街灯の明かりを伴って畳のうえに揺らめく光の網を投げかけていた。
「急ぎの仕事だ。大至急、幽鬼を探してくれ」
 半分寝ぼけているスメラギは、夜摩の調子がいつもと違うとは気付いていなかった。鬼も寝入っているような時間にスメラギを起こした非礼を詫びないのはいつものことだが、スメラギになじられて憎まれ口を返すわけでもなく、冗談めかした関西弁もない。
「わぁった。明日やる」
「ダメだ、今すぐだ」
「今すぐ?」
 スメラギは時間を確かめた。夜中の3時過ぎである。
「真夜中じゃねえか」
「頼む、急ぐんだ」
「おい、今、『頼む』って言ったか?」
 夜摩は、物を頼もうが頼まない普通の会話でも、いつも命令形だ。ようやくスメラギは、夜摩がいつもと違うと気付いた。
「そうだ、頼むから、今すぐ、ヤツを捕まえろ」
「ふん」
 “頼むから”と言っておきながら、やはり夜摩らしく、最後は命令形だった。今はすっかり目が覚めてしまったスメラギは、布団の上に正座した。おもわず居ずまいを正してしまうほど、夜摩は真剣な様子だった。
「その脱獄幽鬼とやらのデータはそろってんだろうな。どうやって死んだか、生きていたときの人間関係、死んだ場所、それから名前…」
「殺人事件の被害者だ。名前は坂井……」
 夜摩が口にした名前をスメラギは繰り返し、聞き返した。それはスメラギの知っている名前ではあったが、脱獄した幽鬼の名前であるはずがない。その人物は生きている。間違いではないのかと聞くと、鬼籍データに間違いなどあるものかと夜摩は切り返した。その瞬間、スメラギはおんぼろアパートを飛び出していた。



 「間に合いますか……」
 「間に合ってもらわないと困る」
  閻魔庁、閻魔王室に唯一、青白い光がともっていた。夜摩のデスクの上に堂々と置かれたPCのスクリーンには、鬼籍データが表示されている。この世の生きとし生けるもののすべての情報、生前の行いから死後の行く先、死ぬ場所、時間などが鬼籍には記載されている。
 夜摩と篁がじっと見つめる、とある人物のデータ、その罪業欄には“殺人”とあり、死後の行く先は“地獄”とあった。だが、死後の行く先の入力された欄には“地獄”の文字の前にカーソルが入って点滅していた。
 夜摩と篁はキーボードに触れてもいない。黙ってスクリーンを見つめる2人の目の前でカーソルは、“地獄”の“獄”の文字を消してしまい、今や“地”を消しにかかろうとして小刻みな点滅を繰り返していた。
 決して書き変えのできないはずの鬼籍データベースが、何者かの手によって改竄されようとしていた。
 データベースの管理責任者である篁は、怒りに顔を真っ赤にしている。夜摩は反対に冷静だった。
「データベースにハッキングするなんて、閻魔庁内部のものにしかできませんよ」
 セキュリティは完璧だった。篁には自負がある。ネットワークからすべて自分が手がけたのだ。ハードこそ人間界のものだが、地獄で使用するように手を加えてある。人間の仕業であるはずがない。篁はハッカーの正体に心あたりがあるようだった。
「わかっている……」
 夜摩もまた、何かを知っているようだった。
 夜摩と篁は、息を殺して鬼籍データが書き変えられる瞬間をみつめるしかない。
 スメラギが、殺人事件の被害者である幽鬼を探し出し、地獄へ連れ帰ってくるのが先か、幽鬼が先まわりして自分を殺した犯人を殺害するのが先か。データの死因欄は“心臓病”から“絞殺”に書き変えられようとしていた。
 脱獄幽鬼の名は「坂井圭介」、今まさに書き変えられようとしているデータの氏名欄には「坂井信行」とあった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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