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罪喰い 2-1

 ゲートを通り抜け、アルを乗せた車は紅葉美しい並木道をひたすら走り続けた。遠目には森に沈む月のようにみえた白いその建物は、近づいてみると古のヨーロッパ王侯貴族の離宮を思わせる佇まいの邸宅だった。砂利を噛みながら、少年が甕から水を注ぐ噴水のあるロータリーを半周し、車はポーチへと進入していった。
 出迎えたのは年老いた執事だった。先に降りたノーマンは執事に目もくれず、正面玄関の階段を駆け足にのぼったなり、建物の中へと消えていった。
 玄関を一歩中に入ると、目の前に大階段が出現した。真紅の絨毯を敷き詰めた階段を中央に、建物内部は左右対称の様を呈していた。
 執事はアルを建物の左翼へと案内した。フレンチウィンドウからの眺めが素晴らしいその場所は客間だった。目の前には緑の芝がひろがり、その先には午後の陽ざしをうけてきらめく湖が佇んでいる。対岸の紅葉が湖面にうつりこみ、まるで一枚の絵画のような景色だ。
 客間にはすでにノーマンがいた。まるでここの主人であるかのように、ノーマンは暖炉そばのワゴンからグラスを取り上げ、カットの細工の美しいデカンタからウイスキーを注いで一息にあおった。
 グラスを手にノーマンは、ちょっとしたボールルームの広さはある客間の隅から隅へと行ったり来たりし、落ち着きがなかった。ロココ調のソファーに黒々としたカソック姿で座るアルが目に入らないはずはないのに何もその場に存在していないかのように扱い、目もくれない、口もきこうとしない。
 ニューオリンズのアルの部屋を出てからというもの、ノーマンは一言も口を開いてなかった。例外は、自家用セスナの操縦士(パイロット)と言い争った時だけだ。
 ハリケーンが近づいているせいで風の強くなってきた中を飛ぶのは危険だと操縦士は言った。だがノーマンは意に介さず、ボストンに向けて飛べと命令した。命より時間が惜しいらしい。結局、ノーマンの剣幕に押される形でセスナは飛び立った。機内でノーマンは押し黙ったままだった。おそらくは、罪喰いの依頼人、ガブリエル・ジョンストンのもとへとむかっているのだろうが、彼女がどういう人物で、どういう状況にあるのか(罪喰いを頼むくらいだから死にかけてはいるのだろうが)といった一切をノーマンは語ろうとしなかった。アルも尋ねなかった。依頼人が女であるのが気にかかったが、とにもかくにも罪喰いを済ませてしまって、ニューオリンズに一刻も早く戻りたい。ニューオリンズの地を飛び立ってすぐ、アルはあの重苦しい湿気が恋しくてたまらなくなっていた。
「遠いところをようこそお越しいただきました、神父(ファーザー)さま。ガブリエル・ジョンストンですわ」
 女の声がするなり、ソファーに腰かけていたノーマンがグラスをテーブルに置いて立ち上がった。
 振り向くと、握手を求めて手をさしのばした女がアルに近づいてくるところだった。慌ててソファーから立ち上がり、アルは女の手を握り返した。綿毛のようにみえたその手は握ってみると滑らかで、氷のように冷たかった。
 罪喰いを頼んできたからには瀕死の人間なのだろうとばかり思っていたが、ジョンストン夫人は健康体そのものだった。ブロンドの髪をアップにしているせいで老けてみえるが、年は三十前後だろう。身につけているのはパールのアクセサリーのみで、藤色のニットのワンピースが体の線をあきらかにしてみせていたが、いやらしさをまったく感じない。ブルーの瞳が魅力的な光を放っていた。
「空の旅はいかがでした?」
「だいぶ揺れました」
「ハリケーンの中を飛んできたのです」
 まるで自分が操縦してきたかのようにノーマンが誇らしげに言った。
「それは災難でしたのね。でも私どもの操縦士の腕は確かですから。昨日、お迎えにあがった時もセスナを出せたらよかったのですけど、都合がつかなかったものですから。でも今日こうしてお目にかかれて嬉しく思いますわ」
 夫人はそう言って、ワゴンに歩み寄っていった。
「神父さま、何をお飲みになさいますの?」
 夫人は新しいグラスを3つ用意していた。そのうちのひとつに夫人はウイスキーを注ぎ、ノーマンに手渡した。ストレートで飲むノーマンの好みを知っているかのように自然な動作だった。アルが断ると、
「私は失礼して、いただかせてもらいますわ。飲まないとやっていられませんもの」
 夫人はもうひとつのグラスに、アイスペールから氷山のようなアイスをひとつふたつ入れてからウイスキーを注いだ。ロックは夫人の好みのようだ。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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