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罪喰い 2-3

 神父としての芝居を続けることを条件に、アルは夫人の夫、デイヴィッド・ジョンストンとの面会を許された。
 罪を告白する意思が本人にあるかどうかを確認するだけなので、別に神父のふりをしようとしまいと、罪喰い自体には影響がない。告解にしろ、罪喰いにしろ、罪を告白するところまでは同じ手順で進む。違いは、司祭の行う告解は神に赦しを乞うのに対し、罪喰いの儀式では罪人の罪を罪喰い自らがそのうちに取り込む。罪人にしてみれば、罪が自分の体から取り除かれさえすればいいだけで、罪をはらってくれる相手が司祭だろうと罪喰いだろうと構いはしない。
 夫人は司祭の行う告解の真似ごとで罪喰いを行ってしまいたいようだったが、ジョンストン自身にとっては司祭だろうと罪喰いであろうと違いも何もわからないだろう。アルは神父の芝居を承知した。
 ジョンストンの病室は建物の右翼部分の一階にあった。もともとは左翼同様、客間として使われていた部屋に手を入れたものなのだろう。左翼の客間と同じ間取りで、フレンチウィンドウと暖炉の位置が左右対称だった。窓の外にみえる湖の景色は同じように美しい。
 ジョンストンのベッドは背もたれ部分を壁際に寄せ、正面のフレンチウィンドウから湖が見える位置に置かれてあった。その周囲を、点滴のポール、血圧や脈拍を監視するモニタなどが取り囲んでいる。そのモニタのそばには椅子があり、ブリーチのしすぎで傷んだ金髪で小太りの初老の女が腰かけていた。ジョンストン家で私的に雇っているパメラ看護師だと紹介された。
 片隅には車椅子が置かれていた。衰弱しきって車椅子生活となったジョンストンのために移動の楽な一階に寝室を移し替えたようだ。
 キングサイズのベッドに寝ているジョンストンは、そこだけ縮尺が狂っているかと目を疑いたくなるほどに小さかった。夫人の夫だから若いだろうとおもっていたら、ずい分と年がいっている。夫人とは父親ほどの年の差はあるだろうか。
 抗がん剤の副作用だろう、頭部の毛髪はすでになかった。口には酸素マスクがあてられ、棒切れのような手からチューブが伸び、点滴のポールへと続いていた。死んではいないのだろうが、生きているとも言い難い、むしろ無理やり生かされている状態だといえた。
「あなた、神父さまがお見えですわ」
 夫人はアルを神父と紹介した。あらかじめ口裏を合わせろと言われているアルは黙って会釈した。
 神父と聞いて、ジョンストンのしみだらけの顔がゆがんだ。ジョンストンは小枝のような指をたて、パメラ看護師に、酸素マスクを取るように要求した。
「神父など呼んだ覚えはない」
 失せろとでも言いたかったらしいが、咳き込んだジョンストンはそれ以上続けられず、パメラ看護師によって再びマスクをつけさせられてしまった。
「私が呼びましたの。前にお話ししました告解の儀式のことで」
 ジョンストンはマスクをしたまま一言二言発して、首を横に振った。アルにはマスクが震えているとしか聞こえなかったのだが、夫人にはジョンストンの言葉が聞き取れたらしい。その美しい青い瞳がたちまち涙にくもった。
「そんなことおっしゃらないで、どうぞ、罪をあらいざらい告白して清い体になって天国へいらして」
 震える夫人の肩を、ノーマンがそっと抱いたのをアルは見逃さなかった。というより、かっと見開いたジョンストンの目の視線の先を追ったら、夫人とノーマンが見えたというわけだったが。
「お前たちはそんなにわしに早く死んでもらいたいのか」
 今度は自力でマスクを外したジョンストンが夫人めがけて罵った。
「そんな……。私はただ、あなたに罪の重荷を捨てて安らかに天国へ行っていただけたらと」
 夫人の青い瞳からたちまち涙が溢れだした。夫人もジョンストンも感情的になってしまい、これでは罪喰い(ジョンストンは告解と思っているが)を行う意思があるかどうか確かめようがない。アルはノーマンに目くばせして、夫人を外へ連れ出すよう促した。
 ノーマンに肩を抱かれ、夫人は病室の外へと出ていった。続いて退出しようとするアルを、ジョンストンが引き止めた。パメラ看護師も退出させられ、病室にはアルとジョンストンのふたりきりとなった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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