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罪喰い 3-3

 肺がんと診断したものの、その発生に疑いをもったドイル医師は、秘かに毒物検査を行った。その結果、ジョンストンはヒ素中毒だと判明した。
 慢性的にヒ素を摂取し続けていると、皮膚がんや肺がんといったがんが発生しやすくなる。ジョンストンの場合は肺がんが発生した。肺がんの原因がヒ素中毒だとわかって残念だとドイル医師は述べた。
「故意に毒を盛られたのではなくて、どこかで偶発的にヒ素にさらされてしまったとは考えられませんの? たとえば飲み水ですとか。どこにヒ素が含まれているか、私、よく存知ませんけれど」
 夫人が“飲み水”と言った瞬間、ウイスキーをロックで飲んでいたライアンの顔がこわばった。氷は水の結晶体だ。客間に集まっている人々のなかで、ライアンの他に“水”を口にしたのは、ロックが好みらしい夫人だけだ。ドイル医師、アルは飲み物を口にしていない。ノーマンはストレート派だ。
「偶発的というのなら、あなたもこの邸で働く誰も彼も、ジョンストンさんのような症状が出ていないといけない。だが、あなたは健康で、香るユリのように美しい」
 美しいと言われた夫人はほんのりと頬を赤らめていた。その様子がまさに咲き誇る大輪のユリのように麗しかった。
「毒を盛っていたのは、あなたじゃないんですか」
 ライアンの一言はその場を凍りつかせた。彼の視線は夫人の上にあった。
「誰だってそう思うだろうに。あなたのように若くて美しい女性が、あんなおいぼれと結婚したのは遺産目当てだろう? 死ぬのが待っていられなくなったんで、毒を盛った。そんなところじゃないのか?」
 夫人の顔からみるみる血の気が引いていった。
「毒を盛るだなんて、そんなことするわけありませんわ! 第一、お互いの資産を守るという意味で婚前契約を交わしています。そうすることが結婚承諾の条件だったではありませんか。あなたの出された条件ですわ」
 唇を震わせながら、しかし力強い声音で夫人は言い切った。
「じゃあ、遺産はいらないと?」
「私のものにはなりませんもの」
「あなたのものになるとしても?」
「そんなこと、あるわけありませんわ。婚前契約が――」
「おやじは、財産の一部をあなたに譲るという遺言状を書いたんだ。そこにいるノーマン弁護士に依頼してだ」
 ライアンはノーマンを指さした。
「あなたは、おやじの遺言状についてノーマンから聞いて知った。寝物語にでも聞いたんじゃないのか?」
 夫人とのあらぬ関係を疑われたノーマンの顔がひきつった。
「僕はそんな遺言状を認めるわけにはいかないと忠告しに急いでやって来たわけだけど、案の定、来てみたら、実は毒を盛られていたっていうじゃないか。おそらく、毒を盛られ始めたのは、遺言状を書いた直後なんじゃないのか」
 医者なら調べればわかるだろうと言わんばかりに、ライアンはドイル医師の顔をみやった。
「ジョンストンさんが遺言状を書いたことと、その内容を、あなたはどうやって知ったというのです?」
 ドイル医師に詰め寄られて、ライアンはしどろもどろになった。うまい言い訳を考えようとする間、ブルーグレーの目が宙を泳いでいたが、何も浮かばなかったらしい。頭のいい男ではないようだ。夫人を追い詰めるつもりだったのだろうが、自ら卑しい人間だと暴露したようなものだった。
「ジョンストンさんが殺害され、夫人が容疑者として逮捕されたら、夫人は相続権を失う。夫婦に子どもはいないから、遺産はすべてあなたのものになる。夫人へ嫌疑を向けようとして、実はあなた自身が毒を盛っているとも考えられる」
 放ったはずの矢が自分にむかって戻ってくるのを見る思いで、ライアンは真っ青になっていた。
「そ、そんな。僕がどうやって毒を盛り続けられたっていうんです? ここに住んではいないっていうのに」
「手段はない。でも動機がある。金だ。動機さえあれば、手段はどうとでも整えようとするものだ。そうは思いませんか、ファーザー」
 ドイル医師はアルに同意を求めた。
「え? ええ、まあ、そうでしょうか」
 アルが慌てて返事をするなり、いたたまれない気分になった夫人がフレンチウィンドウから庭へと飛び出していった。追いかけようとノーマンが腰を浮かせかけたが、いましがたに関係を疑われたばかりなのでうかつに飛び出してはいけないとためらっているようだった。仕方なく、アルが夫人の後を追って庭に出ていった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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