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罪喰い 3-6

「ノーマン……」
 あの日、ノーマンは鍵のかかっていなかったアルの部屋でアルを待ち構えていた。その時に隠しカメラをしかけたか、あるいはアルがバーでバンドメンバーとライブのセッティングをしていた時にか。盗まれるようなものはないから鍵などかけないアルの部屋なら、いつでも出入り自由だ。
「地獄の入り口を作り出してみせるとは、たいしたものだ」
 サタンは皮肉な笑いを浮かべ、プロジェクタをしきりと撫でていた。
 おそらくノーマンは、パメラ看護師が病室を空けた隙にプロジェクタを仕掛けた。そして騒ぎが起こると、今来たかのようなふりで病室にかけつけ、開かないドアを開けようとする芝居で誰も中に入れようとさせなかった。アルの到着を待っていたのだ。ドアが開かなかったのはノーマンの芝居だったからで、夫人が体当たりしただけで簡単にドアは開いた。アルが見た瞬間に、ノーマンはリモコンでプロジェクタのスイッチを切ったのだろう。アルには偽の地獄だとわかってしまうからで、実際アルはしかけだと見破った。ノーマンは、ジョンストンを怯えさせ、堕獄の恐怖を植え付けて罪喰いをしたいと思わせたかったのだろう。戻ってきたアルが罪喰いの儀式を行えば一石二鳥だったが、ジョンストンが罪喰いを拒絶した意思を翻しただけでも彼の目的は達せられたというわけだった。
「サタン、あなたは僕に罪喰いをさせたくないのでしょう」
 アルが罪喰いとして罪人の罪をその身に受け入れ、天国へ送り出してしまうので、地獄の主サタンはアルを忌み嫌っている。罪喰いの儀式の邪魔をするなどは日常茶飯事である。ドイル医師としてサタンが踏み込んでこなければ、アルはもしかしたら騙されて罪喰いの儀式を行ってしまったかもしれない。
「邪魔するだけではつまらないではないか」
 サタンはくっくと喉を鳴らした。
「だから私は余興にデーモンを放ってやった」
「誰かがジョンストンを殺そうとしているという疑心……」
 サタンことドイル医師に毒を盛られていると知らされたジョンストン本人はノーマンと夫人を疑い始めた。ジョンストンの前妻の連れ子ライアンは夫人を疑っている。そのライアンも、夫人に濡れ衣を着せようとしている疑いがある。サタンの思惑通り、暗鬼はすでに誰の心にも憑りついていた。
「ライアンとやらの小僧が私の掌の上でうまいこと踊ってくれてな。手段はあるが動機のない人間に動機が与えられた」
「ジョンストン夫人……」
 ジョンストンを殺す手段をもつが動機をもっていなかった夫人は、しかしライアンの暴露によってジョンストンが死亡することによって遺産が自分のものになると知ってしまった。
「彼女はどんな踊りを踊ってみせてくれるかな? ノーマンもライアンもお前も、せいぜい私を愉しませてくれ。これは記念にもらっていく」
 夜の闇をも震わせるほどの気味悪い高笑いを残し、プロジェクタごとサタンは闇に姿を消してしまった。
 


 二階にある寝室に急いで戻ろうとすると、廊下に明かりが漏れているのに気付いた。夜中に起きている人間がいるらしい。きちんと閉められていない部屋のドアから明かりは漏れているのだった。
 息をひそめて通り過ぎようとすると、中から話し声が漏れ聞こえてきた。声の主は邸を立ち去ったはずのノーマンだった。
 “ファイン”“エル”と、アルの部屋のバスルームで聞いた単語が聞こえてきたので、アルは思わず気になって足を止めた。ノーマンの押し殺した低い声にまじって別の人間の声もかすかに聞き取れた。
「大丈夫(ファイン)、エル。きっとうまくいく」
 わずかに開いたドアの隙間から水色のワンピースを着た女の後ろ姿が見えた。見事なブロンドの髪を背中までおろしているが、夕食時と同じその装いはジョンストン夫人だった。
 アルの視線に気づいたように、夫人はドアの方をふりかえった。夫人が腰をひねった瞬間、部屋の中にいたノーマンの姿が目に飛び込んできた。上着を脱いでネクタイを外したうちとけた格好で、ホルターと銃がはっきりと見えた。ノーマンはドアがきちんとしまっていないと気づいたらしく、足早にむかってきたので、アルは慌ててその場を後にした。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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