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罪喰い 5-1

 サタンから健康な肉体をもらったジョンストンを待っていたのは、連続少女暴行殺害事件に関する裁判だった。
 罪喰いの際にジョンストンが告白したいくつかの殺人のうち、FBIは、パメラ看護師が告発した娘マデリーンの殺人事件について強い関心を寄せた。罪喰いの際の告白はどういうわけかテープに録音されており、そのテープを入手したFBIはマデリーン殺しを自白したものとみなしてジョンストンを逮捕した。DNA鑑定の結果、マデリーン殺害現場に残されていた体液はジョンストンのものと判明した。マデリーンだけではない。1965年から70年代前半にかけて全米各地で多発した少女暴行殺害事件の被害者や現場から採取されていたDNAもジョンストンのものと一致した。その中には、ちまたでは“シャトル事件”として有名な2件の未解決殺人事件も含まれていたものだから、上へ下への大騒ぎになった。
 シャトル事件とは、1972年、アラバマの少女が遠く離れたウィスコンシンで、ウィスコンシンの少女がアラバマで遺体となって発見された事件をいう。遺体が発見されたのはアラバマの少女が先だったが、殺されたのはウィスコンシンの少女が先だった。ウィスコンシンの少女を殺してアラバマの地に遺棄し、その地で少女を殺してウィスコンシンに遺棄するという、2地点を往復したかのような犯人の行動から、シャトル(往復)事件と呼び慣わされていた。どちらも性的暴行をうけた形跡があり、死因は絞殺、被害者の年齢は12歳と14歳と似通っているなどの共通点が多く、後に保存されていた証拠品から採取されたDNAも一致、同一犯による犯行と目されていた。
 シャトル事件で採取されたDNAは、それまで無関係と思われていたマデリーン殺害事件のものと一致、他にもDNAが採取できた3つの少女暴行殺害事件のものとも一致したため、すべて同一犯による犯行と位置づけ、FBIでは連続少女暴行殺害事件として犯人を追っていた。
 DNAという確たる証拠を得ながら、照合する容疑者を得ないFBIの捜査は行き詰っていた。ジョンストンがその罪を自ら告白していなかったら、FBIは彼を逮捕する根拠を得られないで事件は闇に葬られてしまったかもしれない。だが、FBIはジョンストンの自白ともいえる罪喰いの告白テープを手に入れ、ジョンストンを逮捕、DNAの採取に成功した。
 ジョンストンを逮捕するきっかけになった自白テープは罪喰いの告白を録音したものだった。公には罪喰いの事実は伏されていたが、アルと録音した人物は、罪喰いの告白テープだということを知っている。
 録音したのはノーマンだった。
 ジョンストン逮捕、起訴のニュースは全米を駆け巡った。アルはすでにニューオリンズの地で元の生活に戻っていたが、逮捕から起訴、事件の概要や裁判の進行状況について、テレビで見て知っていた。シャトル事件として有名な連続少女暴行殺害事件の犯人が、物流王として名高いジョンストンであったこと、シャトル事件の他にも複数の殺人事件に関わっていることなどから、世間の関心は高く、テレビでジョンストンの姿をみかけない日はない。
 ある時、アルはテレビにちらりと映ったFBI関係者の中にノーマンの姿を見出した。ほんの一瞬だったが、見間違えではなかった。押しかけたリポーターやカメラを避けるようにして、ノーマンは他の捜査官たちとともに裁判所へと入っていった。銃をホルターに入れて携帯しているような男がただの弁護士であるはすがないとは思っていたが、どうやらノーマンはFBIの捜査官だったらしい。 
 アラバマとウィスコンシンの2地点をシャトル(往復)した犯人は車を移動手段に用いたはずだった。どちらの遺体も、道路沿いの人目につきにくい場所に遺棄されていたことから、犯人は双方に土地勘のある人物と見られていた。生まれ育った場所、引っ越していった先、さまざまな可能性を考えるなかで、長距離を移動するトラック運転手が容疑者として浮かんできたとしても不思議はない。ジョンストンは若い頃にトラック運転手をしていたから、FBIの捜査線上に彼が浮かびあがってきたのだろう。だが、ジョンストンを逮捕するだけの確たる根拠がない。政財界に顔の広いジョンストンに下手に手出しは出来ないと手をこまねいていたFBIが考えだしたのが、自白テープだったのだろう。
 ノーマンが顧問弁護士としてジョンストンのもとに潜入し、どうにかしてジョンストンに自白めいた告白をさせようとした。ジョンストンの先が長くないと知った夫人が罪喰いをさせたいと言い出したため、ノーマンはその話に乗った。どうりで偽の地獄のしかけをしてまでもジョンストンに罪喰いをさせて罪の告白をさせたがったわけだと、アルは納得がいった。遺産目当てだとばかりおもっていたが、違う目的があったというわけらしい。
 罪喰いの行われていた間、気を失っていた夫人だけが、テープは仕組まれたものだとしてジョンストンの無実を信じていた。
 法廷の場にも姿をみせ、ジョンストンを支え続けてきた夫人だったが、耐えきれなくなったのか、ある日自殺してしまった。
 ほどなくしてジョンストンも死亡した。出廷中、突然前のめりに机につっぷしたかと思うとそのまま絶命したという。心臓麻痺だった。サタンが寄越した心臓は時限爆弾だったというわけらしい。罪喰いせずに地獄に堕ちたジョンストンの魂を手にしてほくそ笑むサタンの顔が目に浮かぶ。
 あの時、アルの罪喰いを邪魔せず、かえってジョンストンを生かせたのは、この世での苦しみを味あわせてやろうというサタンの意地悪い企てだったのだ。その思惑通り、ジョンストンはそれまでに得た地位も名誉も失い、夫人はジョンストンの過去を知って苦しみ、自殺して果てた。自殺そのものが大罪だから、夫人の魂もまた地獄に堕ちてしまった。ジョンストンと夫人、ふたつの魂を手にしてサタンはさぞかし悦に入っているだろう。アルもまた、罪喰いとしての役柄でサタンの掌の上で踊り、サタンが欲したものを与えてしまったのだ。
 だから女からの罪喰いの依頼は受けるんじゃなかったとアルは今更ながら後悔しきりだった。嫌な予感通り、後味の悪い結末に終わった。結局、誰も救えなかったのだ。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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