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罪喰い 5-3

 空には雲ひとつなかった。遮るもののない日差しは強く、長袖の下の皮膚まで焼き尽くす勢いだ。寄せてはかえす青い波を横目に、アルは先を急いでいた。潮の香りにまじって時折、手にしたユリの花束の甘い香りが鼻をくすぐる。
 砂に足元をすくわれ、砂浜を行くアルの体は右に左に揺れた。足は確かに前へ出しているのだが、先へ進んでいるのかどうか怪しい。面倒なので靴は途中で脱ぎ捨ててしまった。
 砂の一粒一粒は指の間をすりぬけていくほど微小であるのに、互いに手をとりあうと巨大な岩のように行く手を阻む。踏み出した足がゆっくりと砂地に沈んでいく感覚はまるで地獄に飲み込まれていくかのようだ。あがくとかえって足を取られる点でも、砂浜と地獄は共通している。
 女はビーチベッドに横たわって日光浴を楽しんでいた。白のビキニがブロンズの肌を引き立てている。サンオイルを塗りたくった長い手足が艶めかしい。形のいい脚をしていた。ブルーのペディキュアをして、マニキュアも同じ色だった。
「ジョンストン夫人。それとも、シスター・ローザと呼んだほうが?」
 顔の半分を覆わんばかりのサングラスの縁から青い瞳の満月が昇った。太陽を背に立つアルをまぶしげに見つめる女の瞳が三日月ほどに細くなった。
 長かったブロンドの髪は短く切られ、ブルネットに染められている。だが、マイアミビーチの海よりも空よりも青いその瞳の持ち主は、死んだはずのジョンストン夫人に違いなかった。
「シヴィルよ、神父(ファー)さま(ザー)」
 ジョンストン夫人、いやシヴィルの口調は軽やかだった。最初こそ捨てたはずの名前を呼ばれて驚いたものの、呼びかけたのが顔見知りのアルだとわかると、懐かしそうに目を細めた。
「どうぞ、アルと」
 芝居の幕はもう上がってしまった。アルは神父のふりをする必要はもうないのだ。そうと知っていながらシヴィルはアルにむかって神父(ファーザー)と呼びかけた。芝居の脚本を書いた彼女は、アルの神父役が気に入っていたらしい。
「証人保護プログラムで保護されているのに、よくここがわかりましたのね」
「金の流れを追いました。そうしたらここにたどりついた――」

 夫人の墓参りをした際、シスターから夫人の母親も自殺だったと聞いたアルに、ふとある考えが浮かんだ。
 夫人は生前、自分の死後、資産は教会に行くように取り計らってあるとアルに漏らしたことがあった。もしかしたら、夫の犯した罪を償うがごとく、夫人は自らの命を絶ってその遺産を教会に捧げたかったのかもしれないと思ったのだ。
 夫人の遺産が教会にわたったのではないかと尋ねるとシスターは首を横に振った。
「いいえ。確かにあの子は慈善活動に熱心で、この教会にも多額の寄付をしてくれましたけれど、遺産どうこうということはありませんわ」
「しかし……」
 そうだ、正確には教会ではなく、母親がわりだったというシスターに、だった。
「母親がわりに面倒をみてくれたシスターにすべての資産を譲ることにしていると聞きましたが。あなたがそのシスターでは?」
 すると意外な答えが返ってきた。
「シスター・ローザでしたら、亡くなりました。10年も前もことですわ」
 これ以上関わるなという心の声を無視して、アルは夫人の遺産の行方を調べた。夫人の遺言により、信託が設立されていた。受託者(トラスティー)はシスター・ローザ、受益者(ベネフィシャリー)には、教会や慈善事業団体が名を連ねている。だが、それらの慈善事業団体のうち、いくつか実態の不明なものがあった。名前だけで実際には何の活動も行われていないのである。それらの団体には共通点があった。代表者はすべて、マイアミ在住の女性。それがシヴィル・マッケイだった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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