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あじろ けい

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罪喰い 最終話

「ノーマン捜査官とはいつ?」
「はじめ、私はひとりで復讐を遂げるつもりでいました。ジョンストンと結婚したのも復讐の機会をそばでうかがうためでした。FBIが連続少女暴行殺人事件で彼を追っているとは結婚してから知りました。あちらから私に接触があったのです」
 新婚の若い妻になら寝物語に昔の殺人事件を告白するとでも思ったのだろうか。FBIはよほど切羽詰っていたとみえる。それとも、シヴィルの美しさに惹かれたノーマン捜査官が先走ったのだろうか。
「FBIは、自白を欲しがっていました。私に隠しマイクをつけて、それとなく事件についてしゃべらせるよう仕向けてくれないかと頼んできたこともあります。私ははじめ、殺してやろうかと思っていたのだけれど、次第に、世間のさらし者にして罰を受けさせようと思うようになって……」
 そうしてジョンストンの罪の告白を得るために、罪喰いことアルが表舞台に登場させられることになった。
 利用されたとわかっても、アルは何とも思わなかった。罪喰いを利用して人が何をしようと、無関心でいられた。しかし、ひとつだけ気になることがあった。
「トムじいの罪喰いをビデオに撮影して、偽の地獄の入り口をしかけたのは?」
「罪喰いをしないと地獄に堕ちるとでも思わせないと罪喰いに応じないかもしれないと思ったから」
「随分都合よく、罪喰いの様子のビデオが撮影できたものですね。あの日、トムじいが事故にあわなければ――」
「ただの偶然だわ」
 こともなげにシヴィルはさらりと言ってのけた。利用した道端の石がその後どうなろうと知ったことではないと言わんばかりの冷淡さだった。
 トムじいを撥ねた車はスピードを出していたという。乗っていたのはノーマン捜査官か、あるいは別のFBI捜査官か。
 FBIはシヴィルを利用したつもりでいただろうが、利用されていたのはFBIの方だったのかもしれない。
 ジョンストン逮捕に協力した彼女は、証人保護プログラムによってまんまと姿を消し、シスター・ローザに身を変えて、ジョンストン夫人の遺産を受け取った。それだけではない。疑心暗鬼にかられて書き変えられたジョンストンの遺言により、信託の受諾人としてジョンストンの巨額な資産をすべて受け取ってもいる。今は、シヴィル・マッケイとして昼間からビーチでのんびりする生活を謳歌する毎日だ。ジョンストンは死んだのだから、復讐も遂げたことになる。
「パメラ看護師のことは?」
「知らなかったわ。知っていれば、何かしてあげられたでしょうが」
 シヴィルは残念がるようなそぶりをしてみせたが、それは嘘だった。パメラは誰かによってジョンストンが娘を殺した犯人だと知らされ、ジョンストンのもとへとやってきた。呼び寄せたのはシヴィルだろう。ジョンストンのそばにいれば復讐心がたきつけられて何かしでかすだろうと、同じ被害者遺族としてその心理状態を知るシヴィルはパメラの復讐心も利用しようとしたのだ。
「彼女のほうでは気づいていたようです。あなたがヒ素を盛っていたことに。でも黙っていた。そしてあなたの罪を背負った――」
 ヒ素を盛っていたとアルが知っていたので、シヴィルは動揺したようだった。だがそれもほんのつかの間だった。
 パメラがジョンストンの看護師として派遣される前から、ジョンストンの健康状態はおもわしくなかった。それはシヴィルがジョンストン夫人としてヒ素を盛っていたからだ。ヒ素を盛られていると知ってからジョンストンは医者と看護師パメラ以外は近づけようとせず、シヴィルはヒ素を盛る機会を失ってしまった。しかし、シヴィルが睨んだ通り、思わぬところでパメラの復讐心に火がつき、シヴィルの手足としてパメラが動き、ヒ素を盛り続け、ジョンストンを死に至らしめた。
「本当に、かわいそうなことをしてしまいました。あの方、いずれ地獄に?」
「ええ」
「……私も落ちるのかしら、地獄に」
 シヴィルは伏し目がちに尋ねた。恐怖というよりは好奇心から尋ねたようで、怯えたところがまったくなかった。
「その時は僕を呼んでください」
 アルはそういって立ち去ろうとした。
 それまでさえぎられていた太陽の光をまともに顔にうけて、シヴィルは手をかざして日差しを遮った。細めたブルーの瞳はイノセントな輝きを放って美しかった。
 さんさんと降り注ぐ太陽、どこまでも青い空と透き通る海。地上の楽園で生を謳歌するシヴィルは、自分が死に臨んで罪を悔いる日が来ようとは想像もつかないようで、天使の微笑みを浮かべているばかりだった。その笑顔は不思議とサタンの美しい笑みと重なるのだった。
「あなたには僕が必要だ。いつか僕が必要になる日がきっとくる――」

 ゴージャスな体を惜しげもなく晒して若者たちはビーチバレーに興じていた。
 彼らは死を恐れていなかった。まぶしい太陽に照らされて、若さと美は永遠に続くものと思っている。いや、逆に若さと美とは儚いものと知っているからこそ、彼らは今この時の愉楽に貪欲になるのかもしれない。
 砂浜を器用に歩く若者たちを見ていると、アルはどうしようもなく不安にかられる。
 この砂浜のどこかでサタンが自分の手の中に落ちてくる獲物に狙いをつけている――そんな気がしてならないのだ。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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