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渡せなかった手紙 7-1

 霊体に人は見えるが、人には霊体が見えない。ごくまれに「見えて」しまう人間もいるが、それはその人間が「見える」体質なのではなく、霊体のもつエネルギーが生きている人間並みに強い場合だ。霊体のエネルギーが生きている人間並み、もしくは霊体自身が死んだと自覚していない場合には、生きた人間として、人の目にうつることもある。だが、大抵の場合、霊や幽鬼たちは人の目には触れられない。スメラギのように「見えて」「話せる」のは、特異体質だ。
 幽鬼となった小夜子は、かつて恋人と通った映画館で、恋人の生まれ変わりである男、吉田健二と再会した。
 映写室の小さな窓から光放つスクリーンをくいいるように見つめている吉田健二は、姿形こそ違え、まなざしの強さは、かつて愛した柏木孝雄と同じものだった。
 愛しい人は目の前にありながら、小夜子は語りかけることもできず、触れることもできなかった。当然、相手も幽鬼である小夜子の存在に気付かない。小夜子にはそれが不満だった。
 せっかく会えたというのに――
 待ち続けた思いを伝えたい、映画関係の仕事がしたいと言っていた、その夢を叶えた彼におめでとうと言いたい、今も自分を想っていてくれているのか聞きたい、あたたかい腕に一度でいいから抱かれて愛しい人のぬくもりを感じたい――

 小夜子の願いを叶えるため、スメラギは、美月が禰宜(ねぎ)をつとめる富士野宮神社をたずねた。
「美月、また頼むよ、このとーり!」
 両手を合わせて拝むスメラギに、美月は目を細めて笑った。
「いいよ、スギさんの頼みだからね。で、今度はどんな依頼なのさ?」
「初恋の相手と感動の再会、の手伝い、かな」
「僕は何をするのかな?」
「ただ、相手としゃべるだけだから」
「ふーん……。初恋の相手だろう? しゃべるだけで済むのかなあ。相手は? 美人?」
「いや、相手は男で、お前にのってもらう方が女」
 女の人なら大丈夫か、と、美月は意味深なことを呟いた。
 スメラギが霊が見える特異体質に生まれついたなら、その幼なじみの美月もまた、霊をその体に取り込みやすいという特異体質に生まれついていた。左手首につけた水晶の数珠を外せば、美月はたちまちその体を霊にのっとられる。美月家の女性にのみ現れる体質が、その姉を通りこし、妹たちには現れず、どういうわけか美月に出た。
 美月の霊媒体質を、スメラギはちょくちょく、自分の依頼人である幽鬼の頼みごとに利用する。美月の体を借りるのは、生きた人間の肉体でなければ果たせない頼み事を引き受けた場合だ。
 小夜子は、柏木孝雄=吉田健二と会って話がしたいと言った。話をするだけなら、スメラギを介してでもよさそうなものだが、小夜子が拒否した。どうしても、愛する人の体温を感じたいのだという。霊は五感のうち、触感を失ってしまっているため、相手の姿をみることはできても、その存在を感じとることができない。

 「女の人なら大丈夫か……」――不安げに美月はそう漏らし「女だし、大丈夫だろう」――スメラギはそう思った。
 その美月の不安は的中し、スメラギの考えは裏切られることとなる……。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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