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神隠しの森 2-1

 夜が明けるなり愛車のビートルを飛ばすこと数時間、スメラギと美月は、霊能者と称する東雲青竜の霊視によって白骨死体がみつかった山林にたどりついた。霊視によって遺体が発見されたとあって、勇樹ちゃんの自宅や遺体発見現場となった山林の付近はマスコミ関係者でごったがえしている。砂糖にむらがるアリのごとくの彼らを横目に、スメラギと美月は山へと分け入っていった。
 山林は、勇樹ちゃんが失踪した当時、捜索の対象となった場所だった。母親も、勇樹ちゃんは裏山へ迷いこんだのではないかと恐れ、真っ先に目をむけた場所だったが、近所の人々や警察によるその後の捜索でも、勇樹ちゃんは発見されなかった。
 勇樹ちゃん失踪事件は、通称「深山の神隠し事件」として知られている。深山と呼ばれる勇樹ちゃん自宅の裏山付近では、勇樹ちゃんの事件以前にも不可解な事件が続いていた。裏山付近をうろついているのを目撃された人々がその後行方不明になるというもので、秘かに神隠しではないかと噂され、山林は神隠しの森と呼ばれて恐れられていた。
 勇樹ちゃん失踪事件も他の行方不明事件同様、神隠しにあったのではないかと地元では囁かれていた。もちろん、神隠しにあったのだという非現実的な説を警察は支持しない。だが、勇樹ちゃんを含め、行方不明者たちの消息は一向に知れなかった。
 昨日の生放送番組で白骨死体がみつかるまでは――

「数珠、この先、何があっても外すなよ」
 山へ一歩足を踏み入れたとたん、スメラギは美月の左手首をつかんだ。
「わかった」
 スメラギの手を払いのけた美月の手首に、水晶の数珠があらわになった。美月の家系は霊媒体質だ。美月家の女にしかあらわれないその体質が、美月の代に限っては男の美月に出た。数珠はふいの憑依を防ぐ護符である。
 スメラギの父親と親友だという美月の父親から、スメラギは美月を守るよう言い含められている。「拓也くんは霊が見えるんだから、龍之介に憑依しようとするよからぬ霊を見かけたら即刻退けるように」と事あるごとに言いつけられ、「もし龍之介を守れなかったらただじゃすませないから」と脅されてもいる。恐ろしい剣幕でまくしたてられるのではなく、笑顔で言われるものだからかえって恐怖心がわきたってしまう。美月の父親だけでなく、何かと世話を焼いてくれた美月の母親も、美月の憑依に関しては父親同様、笑顔でスメラギにプレッシャーを与え続けたものだった。
「でも、俺が頼む奴だけ乗っけてもらうかもしんねえから」
「スギさんの頼みなら断れないねぇ」
 霊の心残りを解消するため、スメラギは美月の体を借りることがある。肉体をもたない霊の心残りは時に肉体の存在を必要とする場合があるからである。美月に霊を憑依させているとは、スメラギと美月だけの秘密だった。霊の心残りを解消する裏稼業において、美月はスメラギの良きパートナーだった。
「勇樹ちゃんの霊体を僕に乗せるつもりかい?」
「まあ、な」
 山に入ったときから、スメラギは霊視防止のメガネを外している。スメラギは、東雲青竜が“みた”という勇樹ちゃんの霊を捜していた。
 両親の心情を慮って、山にさまよう霊たちから情報を得ていると嘘をついたが、実は始めから勇樹ちゃんの霊とだけやりとりをしていたと東雲青竜は告白した。その様子はテレビには映っていなかった。スタッフのひとりが頭がい骨を手にしたとたん、スメラギたちがみていたテレビ画面はコマーシャルに切り替わった。コマーシャルがあけると、何の前振りもなく未解決事件の再現ドラマがはじまった。その間、スタジオは大混乱だったのだと、スメラギはスタジオにいた鴻巣から聞いて知っている。プロデューサーらしき人物が司会者と長いこと話し込み、東雲青竜は勇樹ちゃん両親にむかって、勇樹ちゃんの霊がみえたので亡くなったのはすぐにわかったが、どう伝えたらいいかわからず、こういう形になってしまったと詫びたのだという。
 その話を鴻巣から聞いて、スメラギは疑問を抱いた。
 霊はテレビには映らない。スタジオにいた東雲青竜に、神隠しの森にいた勇樹ちゃんの霊が見えたはずがない。勇樹ちゃんの霊がスタジオを訪れ、東雲青竜に接触したというのなら話は別であるが、その可能性は限りなくゼロに近い。
 となれば、東雲青竜が勇樹ちゃんの眠る場所を知り得たのは、事前に神隠しの森を訪れ、勇樹ちゃんの霊に接触してということになる。東雲青竜が本物の霊能者であれば、の場合の話であるが。
 しかし、東雲青竜が偽の霊能者であれば、どうやって勇樹ちゃんの遺体のある場所を知り得たというのか。やはり、本人が言うように、勇樹ちゃん本人から聞いたとしか考えられない。
 番組が終了し、六畳一間のアパートに帰って万年床に横になったものの、スメラギは東雲青竜のことを考えて寝付けなかった。
 東雲青竜は果たして自分と同じ霊視能力をもつ人間なのかどうか。彼の霊視能力には疑わしい部分がある。しかし、霊視能力なくしては勇樹ちゃんの遺体のある場所を知り得たはずがない……。考えは常に“だが”“しかし”の壁にぶつかり、東雲青竜が霊能者であるか否かの結論は堂々巡りを繰り返すばかりで、まんじりともせずに夜が明けてしまった。
 白む空を窓から眺めているうち、スメラギはあることを思いついた。神隠しの森へ自ら出向き、勇樹ちゃんの霊に接触しよう。勇樹ちゃんの霊がいれば、東雲青竜の霊視能力は本物だ。この世に留まっているのは未練があるからだろうから、美月も連れていってついでに勇樹ちゃんの心残りも解消してやろう。もし、勇樹ちゃんの霊そのものが存在しなければ、東雲青竜は偽者の霊能者だ。どうやって遺体のある場所を知ったのかについての疑問は残るものの、その点は無視するとして、東雲青竜が霊能者であるかどうかについては一応の判断がつく。
 神隠しの森でさがしているのは勇樹ちゃんの霊には違いないが、その実、東雲青竜が霊能者であるかどうかの証拠をスメラギは得ようとしていた。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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