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神隠しの森 2-3

「スギさん。思ったんだけど、神隠しと言われている行方不明事件が続いているのは、ひょっとして熊に襲われたのじゃないかな」
「可能性は否定できねえけどな……」
 美月の熊襲撃説に納得しかねると言わんばかりに首をかしげたスメラギの正面を、黒い影が横切った。とっさに横にいる美月をふりかえるが、美月は気づいていない。スメラギにしか見えていないその影は、木々の間を縫って立ち去ろうとしていた。
「おい、待ちやがれ!」
 勇樹ちゃんの霊だと、とっさにスメラギは駆け出し、影の後を追った。
 木々の間を素早く駆け抜ける影を捕まえてみれば、その正体は死神だった。
「なんだ、お前か」
「何だ、ハリセンボン」
 死神はスメラギをハリセンボンと呼ぶ。スメラギの短く立った白髪がそうみえるところからきている。スメラギは死神を葬儀屋と呼ぶ。黒のスーツに黒のネクタイと、葬儀屋の出で立ちそのままの呼び名だ。
「こんなところで何してんだ、葬儀屋」
「死神の仕事に決まっている。魂の回収だ。今月はノルマがきついんだ。ここに集まってる連中を引き上げてやっとノルマ達成だ」
「まーた夜摩のきまぐれか、勘弁してくれだな」
 死神は、死人の魂を地獄へ連れていく仕事をしている。地獄では閻魔王こと夜摩が待ち構えていて、生前の行いによって転生、天国または地獄の死後の行く先を決める。とはいうものの、死後の行く先は予め決められて、鬼籍というデータベースに記録されている。だが、地獄に落ちると決まっているものでも、天国行きと“決まる”場合がある。地獄の沙汰は金次第なのである。夜摩に金を積めば、予定はいくらでもひっくり返る。
 死んだ直後の魂を引っ立てていく仕事の他に、死神は地獄を抜けだしたり、死んだと知らずにこの世をうろつく魂を回収している。それらの死者の数は月ごとに決められていて、死神はそのノルマを達成しなければならない。時に夜摩はとんでもない数の死者の霊を要求する。そんな時、死神は心霊スポットなどを訪れ、大量の霊をかっさらっていく。彼らのうち、この世に未練があるとして死神の手を逃れようとするものを、死神はスメラギのもとへと連れてくる。きれいさっぱり心残りを解消してもらい、楽にあの世へ連れていくためである。この世に未練のある霊ほどめんどくさいものはないと、死神は常日頃ぼやいている。
 スメラギもまた、夜摩に、心残りを解消した霊を連れてこいと言われることがある。そんな時に手っ取り早く霊を探しあてることのできる場所が、いわゆる心霊スポットだった。霊たちもひとりだと寂しいと感じるらしく、たまり場のような場所がいくつか存在する。深山の神隠しの森は、スメラギが知っているそんなスポットのひとつだった。
「ここにいた連中は全部引き上げさせてもらった」
 それでスメラギには合点がいった。いるはずの霊がまったくみえない。死神がすでにあの世へ連れて行ったからだった。
「おい、今全員っていったか?」
「一人残らずだ」
「……回収したのはいつだ?」
「昨日だ」
「昨日のいつだ? 何時何分?」
「なんだ、お前。小学生のガキか」
「いいから、昨日のいつだったか教えろよ」
 食い下がるスメラギにむかって、死神は腕の時計を確認する仕草をしてみせた。だが、その腕に時計はなかった。死神は時計などしないとスメラギは知っている。
「昨日の夕方だ。時間はわからん」
 未解決事件をつのる生放送の番組が始まったのは昨日の午後七時。勇樹ちゃんの事件をとりあげ、東雲青竜が失踪現場となった神隠しの森を霊視したのは確か八時を過ぎていた。東雲青竜は当日には勇樹ちゃんの霊をみてはいない。見えたはずがない。その時間には、勇樹ちゃんの霊を含むすべての霊は神隠しの森に存在していなかった。
「……今回回収したなかに子どもはいたか? 三歳ぐらいの男の子だ」
 東雲青竜が事前に勇樹ちゃんの霊に接触していたとしたら、死神が連れていった霊たちの中に勇樹ちゃんがいるはずだった。
「いなかった」
 死神は即答した。
 全員連れていったと言っているが、意外に適当な仕事ぶりの死神のことだから、勇樹ちゃんのような小さな子どもの霊を見逃してしまったかもしれない。
 東雲青竜は昨日以前に、勇樹ちゃんの霊と接触したのだろう、やはり彼は本物の霊能者かもしれないというスメラギの淡い期待はだが、死神の次の一言で打ち消されてしまった。
「子どもの霊なら何年か前に連れて行った」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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