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あじろ けい

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神隠しの森 5-2

「スギさん、熊……」
 山の奥へと進んでいこうとするスメラギを、美月が引き止めた。以前に来た時、熊が出ると警告されたのを思い出したらしい。
「あー? 熊? んなもん、出ねえよ」
「忘れたのかい? 出るって言われたじゃないか。熊の爪痕だってみただろう?」
「これのことか?」
 スメラギは例の爪痕のある木の前に立っていた。
 スメラギたちの目線の高さに熊の爪痕がはっきりと見て取れた。くっきりと四本の平行線が木の幹に刻まれている。
「よくみてみろ。熊のひっかき傷ってのは、この木に一か所しかねえんだ。前に来た時、他の木も調べてみたが、何の傷もなかった。この木だけに傷があって、そしてこの木の一か所にしか傷跡がない。それっておかしくねえか? 熊ってのは両手両足あるんだろ? 両手でひっかいたら」と、スメラギは両手をあげ、爪をたてる仕草をしてみせた。
「傷は少なくとも二つはあるべきだ。この傷は人間がつけたんだ。熊の剥製の手か何かをつかってギィーってやったんだろ」
 スメラギは早くから作為を感じ取っていた。疑惑が確信に変わったのは、立ち寄った蕎麦屋で熊の剥製を見た時だった。熊の剥製を使って、熊が立ちあがった時の高さ、爪痕を残したらどのくらいの高さに残るものかを確認したスメラギは、神隠しの森で見た爪痕は誰かが意図的につけたものだと確信した。神隠しの森で見た熊の爪痕は、スメラギの目線の高さにあった。木にのぼろうとしてついた爪の痕なら、頭より上部、スメラギの頭部より少し上になければならない。
「でも、誰が、なぜ?」
「この山に人を入れたくない人物がいるってこったな。熊が出るとわかればわざわざ入ろうっていう人間はいねえだろうし」
「それは誰……」
「おめえも誰かってのは薄々わかってんだろ?」
 スメラギは森の中へと入っていった。来た道のはるか遠くに豪邸と人だかりがある。人だかりの中心にいるのは、この森の所有者である村上太郎だ。
「神隠しっていうのは、入ってほしくない森に入ったから、つまり……」
「森の秘密をもって外に出られちゃ困るから“足止め”したってとこだろうな」
 スメラギは言葉を濁した。
「前に来たことがあるみたいだって言ってただろ? 来たことあんだよ。ここにはいつでも霊がいる。いすぎだったんだ――」
 閻魔王こと夜摩から死者の霊を集めてこいと言われると、スメラギはこの森へと足を運んだ。死者たちは何も語らず、ただ心残りを口にし、スメラギによって解消された後はあの世へと旅立っていった。死者がこの世に未練を残すのは、その死が突然に訪れた場合に多い。死ぬとはおもっていないから、明日に明日にと引き伸ばされたことがらが心残りとなる。スメラギの仕事はその心残りを解消するだけだったし、その死因については無関心でいるようにしていた。過去は変えられない。スメラギも霊たちもそれはわかっていて、何故死んだかについては互いに深くは考えなかった。
「人の命を奪ってでも出入りを阻止したい何かがこの山にはある。そうまでして守りたい秘密ってのは何なんだ……」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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