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あじろ けい

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なのなのな 2-3

凄まじいモテぶりには嫉妬する気にすらなれない。それにしても、母体の数が多いのだから、その中にはマトモな男がいてもいいはずなのに、桃子のめがねに適う男は一人もいなかった。
 合コンとナンパ、だもんね――
 そもそも母体そのものの質が悪い。付き合いや出会いに積極的なのは百歩譲っていいとしても、気軽さは気持ちの軽さを反映しているようで、桃子はどうしても合コンが好きになれない。しかし、合コンをいくら否定してみせても、彩花はこれだけは譲れないと言って参加をやめようとはしなかった。それならそれでいいと、桃子はひいた。しょせん自分は補助輪、いつかは自分でバランスを取って恋の自転車を漕いでいかないのは彩花なのだ。
 桃子は彩花からのメールを待った。静かなオフィスにアデルのしっとりした歌声が染み入っていく。さっきよりも音量が上がっている気がする。まるで離れたワークステーションにいる桃子に聴かせようとしているように。
 ライブ、誘い損ねたな――
 桃子の恋路はタイミング悪く鳴った彩花からの電話に邪魔された。馬がいたら、間違いなく彩花を蹴らせていた。
 でも――
 誘うより誘われたいのが乙女心。誘わなくてかえってよかったかもしれない。
 誘われなかったのは、誘うような人が貴一にはいるからかもしれない。桃子はそう考えることにした。自分に魅力がないから誘われなかったと考えるより、他に誰かがいるからと考えるほうが精神衛生にはいい。
 彼女がいるのか、なんて聞いたこともない。あまりに露骨すぎるし、知るための回りくどい方法を考えるのも一苦労だ。それだけでパワポのスライド十枚は軽く越す。
 さりげなく聞けたらとも思うが、そんな器用に立ち回れるくらいならとっくに 動いている。貴一とは二人きりで話すこともあるが、仕事の相談にのってもらうだけで、仕事以上の話にはならない。桃子は貴一のプライベートな部分についてはあまり知らない。貴一が洋楽を聴くと知ったのも今夜が初めてだった。
 片思い歴六年。生まれたばかりの子が小学生になる。小学生なら中学生になる。入学した一年生が卒業しようかという年月を経ても、桃子は貴一を卒業できないでいる。
 先輩と後輩の関係、それでもいいと思い始めていた。始まらなければ終わらない。だが、ふと目にしてしまった弱弱しい貴一の姿に心が揺れた。思い続けて六年。今晩ほど貴一のすべてを手に入れたいと思ったことはなかった。
 でも、きっと誰かいる――
 三十過ぎたいい年の男がひとりなわけはない。甘い系統の整った顔立ちで口角がキュッとあがる笑顔が何よりキュートだ。三十過ぎの男にキュートはないかもしれないが、まるで少女マンガの主人公のようにさわやかな笑顔はキュートとしか形容しようがない。
 性格もいい。「ありがとう」が口癖で、どんな小さな頼み事でも人にしてもらったら「ありがとう」と感謝の言葉が口をついて出る。わざとらしさはない。身についた動作で、そうするのが当たり前という態度な上にさわやかな笑顔付きで「ありがとう」と言われたら、大抵は恋に落ちる。桃子は落ちた。
 貴一のような男は、抜け目ない女にさっさと持っていかれていそうなものだが、今だに独身でいるのは、仕事にかまけてしまっているからだろう。今夜に限らず、貴一は夜遅くまでオフィスに残っていることが多かった。彼女がいたとしても、仕事中毒の貴一とは続かないだろう。
 もしかしたら、ライブに誘うような人はいないのかもしれない。桃子の胸に再び希望の火が灯る。あれだけ忙しくしていたら出会いの場もないだろう。貴一は、間違ってもナンパなどしそうもないタイプだし、合コンには少なくとも率先しては行かなさそうだ。
 彩花も、付き合うなら、貴一のような真面目な男を選べばいいのにと、送られてきたメールの写真を見ながら桃子は思った。つくづく彩花は男を見る目がない。誠実な人間を求めるのなら行く場所が間違っている。写真の男たちは三人とも派手な色とデザインのスーツ姿で、髪は色こそ赤、茶、赤紫と違えど、寝癖と見間違えるような同じヘアスタイルで、似たり寄ったりの外見だった。プロフィールにはキラキラしい漢字が並んでいた。それぞれの名前らしいが、読めない。読めないが、艶めかしさだけは十分に受け取れた。
「全員ダメ」と返信し、桃子はケータイの電源を切った。今夜はアデルの歌声に酔っていたい気分だった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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