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あじろ けい

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なのなのな 4-1

「付き合いたいって言われたの、佐野さんに」
 彩花からそう聞かされた瞬間、桃子は飲みかけていたファジーネーブルをマーライオンみたいに吹き出しそうになった。必死の思いで口を閉じ、喉に流し込んでしまおうとして気管に入ってしまったのか、ひどくむせこんでしまった。
 げほげほと咳き込む桃子の背中を、「大丈夫」と声をかけながら、彩花が何度もさすってくれた。死ぬかと思った。というか、死んでしまってもよかった。
 貴一が彩花に告白したって? 夢でも見ているのだろうか。『オステリア』で彩花の泣き言を聞かされている夢。きっとそうだ。夢だから、貴一は彩花に告白したなんてことになっているんだ。
 だが、頬をつねるまでもなく、アルコールが傷つけた胸の痛みが、すべて現実なのだと物語っていた。
「いつ?」
「先週だったかな? 食事に誘われたの」
「食事?」
「ほら、お友だちのデザイン講師のインタビューに付き合ってくれたお礼がしたいからって言われて。別に何かしたわけじゃないし、ただ聞かれたことに答えただけだから、お礼なんかいいですって断ったんだけど、どうしてもって言われて」
「行ったんだ、食事に」
「うん、行った。イタリアンのお店」
「夜景のきれいな?」
「よくわかったね。もしかして桃子も知ってるお店? 桃子の好みっぽかったよ。もちもちパスタがすっごくおいしかった! 今度一緒に行こうね」
 彩花は無邪気に笑ってみせたが、ハンカチで口元をおさえた桃子の顔は引きつっていた。
「食事に誘われたって、それってデートってことだよね……」
「まだ付き合ってないもん。デートじゃないよ、ただの食事」
「でも二人きりならデートじゃないの」
「そう? 食事してバイバイかと思ったら、話があるって真剣ムードになっちゃって」
「付き合ってって言われたんだ」
「うん。前から私のこと、気になってたんだって。ちょっと意外だった」
 それは桃子のセリフだった。役職、年齢問わず、男性社員ならほとんど全員が彩花をちやほやした。そんな中でひとり冷静でいたのが貴一だった。彩花に関心を示さない貴一を、さすがそこらへんの男とは違うと、桃子は秘かに誇りに思っていた。
「私って、佐野さんのタイプじゃないでしょ? 佐野さんには何っていうか、クールビューティー系の女の人が似合うと思うんだよね、桃子みたいな、いかにもデキますっていうタイプの女性」
 彩花に言われなくても、桃子自身も、貴一にはキャリアウーマン系の女が似合うと思っていた。だからこそ、仕事に一生懸命にこなし、貴一と対等に話のできる女を目指して日々努力してきた。だが、貴一に告白されたのは桃子ではなくて、彩花だった。
「それで、告白されて、何て返事したの?」
「返事はまだしてないの。男関係は桃子に判断してもらうことになってるから、まず桃子に話をしてからと思って。ねえ、桃子、どうしたらいい?」
「……」
 まだ胸が苦しいふりで桃子は黙っていた。脳みそを鷲掴みにされ、揺さぶられているみたいに世界がグラグラ揺れている。アルコールの流れていった気管が焼け付くように痛い。いっそ心臓にアルコールが流れていったら、死んでしまえたんだろうか。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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