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あじろ けい

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なのなのな 4-2

 桃子の判断を辛抱強く待つ彩花は、女の桃子からみてもかわいい。大きくて潤んだ瞳に上目づかいで見つめられた日には、男なら恋に落ちてしまう。貴一も男だったということだ。ザ・女子といったかわいい女の子が好きな……。
「彩花は佐野先輩のこと、どう思っているの?」
 桃子は賭けに出た。もし彩花が貴一に好意を持っているのなら、潔く身を引く。だが、彩花の返事は「嫌いじゃない」という曖昧なものだった。
「彩花はどうしたい?」
 そう言いながら、桃子は自問した。自分はどうしたい? 貴一を好きなことを彩花に打ち明けて付き合いをやめさせたい?
「決めてくれないの?」
 彩花がリスのように頬を膨らませた。ほんのり赤く染まった頬が桃のようだ。
「私が決めるなんてことはちょっと横に置いておいて。自分で決めなくちゃならないとしたら、どうしてる?」
「うーん……」
 長い睫を二、三度しばたかせた後、彩花が言った。
「多分、断ると思う。タイプじゃないから」
 世界が揺れなくなった。胸の痛みは嘘のようにすっかり消えてなくなっていていた。
 言ってしまおうか――桃子は悩んだ。
 実は貴一のことが好きなのだと告げたら、彩花は身を引いてくれるかもしれない。貴一がタイプでないのなら、付き合わないことになっても彩花は傷つかない。
 どちらにしようかな 天の神様の言うとおり――
 胸の内で、桃子は人差し指を左右に振った。貴一を好きだと言う、言わない。指がとまった方を選択するつもりだった。しかし、その必要はなかった。指がとまる前に、彩花が決定を下した。
「でも、どうなんだろう。佐野さんて、前に桃子が言っていた理想の男性像そのものなのよね。佐野さんと付き合ったら泣かされないんだろうなって思うと、こういう人と付き合った方がいいのかなって。私、もうダメンズウォーカーを卒業したいもの。これからは笑っているだけの恋がしたい」
 桃子は指を振るのを止めた。
 貴一を好きなことは彩花には言わない。
 言ったところで何も変わらないと桃子は気づいてしまった。もし貴一を好きだと告げたら、彩花は桃子に遠慮して身を引くかもしれない。だが、貴一の彩花に対する思いは変わらない。彩花と付き合わないからといって桃子を好きになることは決してない。貴一は彩花を好きイコール貴一は桃子を好きではないの等式は崩せない。
「でも、佐野さんをよく知っている桃子がダメっていうなら、断るけど。ほら、私、男を見る目がないから。桃子がダメっていうのなら、それなりの理由があると思うし。全部、桃子の言う通りにする」
 彩花の笑顔には桃子に寄せる信頼が満ち満ちていた。貴一と付き合うなと言えば、彩花は素直に従うだろう。だが、貴一と付き合うなという理由が何ひとつない。貴一はダメ男ではないから、理由があるとすれば、桃子の嫉妬だけ……。
「佐野先輩は――」と言いかけて、桃子は咳払いをした。同時に醜い嫉妬心も払ったつもりだった。
「佐野先輩は、素敵な男性だよ。彼女を大事にするタイプ。付き合ったら彩花のこと、すごく大切にしてくれると思う」
「そっかぁ」
 彩花は顔の前で両手の指の先だけをあわせ、しばらく考えこんでいた。
「桃子がそう言うなら、付き合うって返事することにする。あれ、桃子、どうしたの、泣いたりなんかして」
 彩花に言われて初めて桃子は、生ぬるいものが頬をつたっていると気づいた。
「あれ、何だろ。あ、きっとさっきのカクテルが出てきたんだよ」
 桃子は慌てて顔を背け、ハンカチで目頭を押さえた。涙腺が決壊し、溢れ出した涙はたちまちハンカチに沁みを作った。
「気管に入ったんじゃなかったの」
「鼻にも入ったのかも」
「鼻と目ってつながってるの?」
 小首を傾げながら、彩花がハンカチを差し出した。ガーベラの花模様にレースの縁取りがしてある、華奢なデザインのものだった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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