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あじろ けい

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渡せなかった手紙 1-2

 黒いスーツに黒いタイとまるで葬儀屋のような出で立ち、夕暮れ時の影のようにひょろりとした男の背後には、白髪の小柄な老人が死人のような青ざめた顔色で立っていた。
 スメラギが男を‘死神’と呼んだのは、憎まれ口ではない。
全身黒ずくめ、無表情でたたずんでいる男は、人がこの世を去るときに訪れる死神、その後ろで深々と腰を折っている老人は、ついさきほど死んだばかりの人間の魂、霊魂である。
 表向きは、浮気調査に迷いネコ探しの看板を掲げるスメラギ探偵事務所は、死人の最期の頼みをきくのが本業である。死神は時々こうしてこの世に思い残すことのある死人の魂を連れてきてはスメラギに心残りの解消を依頼する。
 この世に思いを残して死んだ人間は、時に死神の手を逃れ、幽鬼となってこの世に留まり続ける。時たま人の目に幽霊とみえるのはこの幽鬼である。人の魂をこの世からあの世へ送り届けるのが死神の仕事、この世での心残りを取り払っておとなしくあの世へ行ってもらおうと、死神はこの世に執着する霊体をスメラギのもとへと連れてくる。この世に未練のあるものの魂の引き取りほど面倒なものはない。逃げ出すものは多く、追うのは難しい。死神とて楽に仕事がしたいのだ。
 霊感の強い血筋に生まれたスメラギは、霊体が見え、言葉を交わすことができる。彼のもとには、死神に連れられたもの、死神のもとを逃げ出したもの、そうでなくてもこの世に心残りを残してさまよい続ける幽鬼たちがやってきては、あれやこれやといろいろな事を依頼していくので、スメラギ自身は、幽鬼たちの何でも屋だと認識している。実際スメラギは、恨みをはらす以外のことなら何でも引き受ける。一番多い依頼は人間関係、特に恋愛関係と家族関係が目立ち、変わったものではどうしてもどこそこのあれというラーメンが食べたいというものがあった。

 宮崎と名乗った老人の依頼、心残りは、生前渡しそびれた手紙を老人にかわって渡して欲しいというものだった。
 宮崎老人は、左前の懐から大事そうに一通の手紙を取り出してみせた。長方形の封筒の四隅はかすかに黄ばんで年月をうかがわせたが、保存状態はきわめて良く、宛名の墨もいまだ黒々としていた。
 よほど宮崎老人が大切に保管しておいたのだろう。表書きには住所と宛名が楷書で書かれてあった。点やハネははっきりと、払いの先まで筆先がのびている。のびやかな大きな字で、宛名は「宮内小夜子様」と読めた。手紙は恋文(ラブレター)で、相手は初恋の人だろうか。裏書には柏木孝雄とあった。
 「戦友から渡してくれと頼まれた手紙です。いまはの際に頼まれたのですが、どうにも渡すことができませんで。あの世に柏木にあわせる顔がなく、どうも手紙のことが気がかりでおちおち死んでもいられないと思っていましたら、こちらのお迎えの方が、それなら、と、あなた様をご紹介くださいまして」
 宮崎老人と柏木孝雄はインドシナ戦線を共に戦った。お互い学生であったこと、趣味が映画鑑賞と同じだったことから二人は意気投合した。戦線にあって映画などおおっぴらにできるはずものなく、二人は上官に隠れて互いのこれまで観た映画のあれこれを語りあい、そのうちに個人的なことまで打ち明ける仲になっていった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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