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あじろ けい

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なのなのな 4-6

 目覚まし時計が鳴り続けている。起きなければならないのはわかっているが、体がだるい。このところの残業続きで眠くて仕方ない。アラームをとめようと夢見心地で布団から手を出し、サイドテーブルにあるはずの目覚まし時計のありかをさぐった。
 だが、アラームを止めたはずなのに音は鳴りやまない。それもそのはずで、鳴っているのは部屋のインターホンだった。ベッドの上に跳ね上がった桃子は、とっさに時間を確認した。時刻は二時になろうとしていた。
(こんな夜中に一体何だっていうの?)
 ヘッドフォンを外し、まだ半分寝ている体を引きずるようにして桃子は玄関へとむかった。六〇七号室の「騒音」が毎晩うるさいので、この頃ではヘッドフォンをして寝る。骨の芯まで震わせる大音量が神経を麻痺させるので、かえって寝つきがよくなった。今やメタルロックは桃子の子守歌だ。
 ドアスコープからは若い女の姿が見えた。黒く艶やかな髪の女で、長さは胸のあたりまである。青白い肌に凄みのある顔つきで、生きている人間のようには見えない。まさか幽霊かと一瞬おののいたが、幽霊ならしつこいまでにインターホンを鳴らさなくても、勝手にドアをすり抜けて部屋に入ってくるだろう。相手が人間なら用心するにこしたことはない。チェーンをかけたまま、桃子はドアを開けた。
「あの、何でしょう」 
「リョーヘイ、いるんでしょ?」
 女はドアの隙間に素早く片足を入れ、部屋の中をのぞきこんだ。
「わかってんだから。リョーヘイ、早く出て来なさいよ!」
 隙間からでも部屋に入ろうとする女を押しとどめようとする桃子を押しのけ、女は叫んだ。
「何なんですか、夜中にいきなり人の家に押しかけてきて。リョーヘイって、大和亮平のことですか? 彼の部屋なら、隣の六〇七号室です。うちは六〇六号室。ちゃんと部屋番号確認してください」
 とげとげしい口調でまくしたてるなり、桃子はドアを閉めようとしたが、女の右足がストッパーの役割を果たしてしまっていた。
「足どけてもらえます? ドア閉められないので」
 眠い瞼を必死に押し上げながら、桃子は女を睨みつけた。足を引くどころか、女は桃子をきっと睨み返してきた。
「リョーヘイがこの部屋に逃げ込んだのはわかってるの。ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとリョーヘイを出しなさいよ」
 女の目は完全に座っていた。酔っているのとは違う、心が壊れかけているような目つきだ。これはまずいと、桃子は力づくでドアを閉めようとした。
「誰もこの部屋にはいません。私ひとりです」
「ウソつかないでよ。私、見たんだから。リョーヘイがベランダ伝いにこっちの部屋に移っていくの」
 女はチェーンの下にかがみこみ、わずかな隙間から部屋に入ってこようとした。痩せた彼女の体格なら、体を横にすればすり抜けられそうだった。桃子は仁王立ちで応戦した。
「ウソなんかついてません。誰もベランダ伝いに私の部屋になんか来てません」
「リョーヘイをかばってるの? あんたもリョーヘイの女なの?」
 女の目がたちまちつりあがっていく。桃子は喧嘩腰の口調を改め
「私はただの隣人です。あなたとお隣さんとで何があったかしらないけど、彼はこっちの部屋には来てません」
「でも、私見たわ。浮気現場を抑えてやろうとして部屋に入ったら、リョーヘイと女がベッドに寝てて、私と目があったとたん、リョーヘイのヤツ、ベランダに逃げたんだから」
「じゃあ、ベランダの隅っこにでも隠れているんじゃないの? 今ごろ、ベランダから部屋に戻ってるかも」
「それはないわ。ベランダの窓の鍵は閉めてやったから」
 浮気現場を目の当たりにして頭に血がのぼっていそうなものなのに、男の逃げ道を断った女の冷静さに、桃子は怖さを忘れて感嘆せずにはいられなかった。
「わかった。じゃあ、中に入って、彼がいるかどうか確かめてみれば? だから足どけてくれる? ドアを一旦閉めないと開けられないから」
「そう言って、私を閉め出す気なんでしょ」
「チェーンを外さないとドアは開けてあげられない」
 桃子は事実を穏やかに告げた。桃子の言葉を解析するかのように何度も目をしばたかせた後、女はゆっくりと足を抜いた。その間中、女の目は桃子を睨みつけていた。少しでも桃子が怪しい動きをしようものなら、とってかかるつもりだといわんばかりに。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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