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なのなのな 4-9

 桃子が呆れている間に、亮平はそそくさと部屋の中にあがりこみ、ラグの上にあぐらをかいて座った。どうあっても居座るつもりらしい。
「その格好だけはどうにかしてよね」
 一応、気を遣って局部だけは両手で覆って隠しているが、全裸の亮平である。桃子は使っていないタオルがあったはずだとバスルームにむかった。未使用のタオルをもって戻ってくるまでわずか十分の間に、亮平はどこから探し出してきたものか、桃子のマキシワンピをちゃっかり着こんでいた。あぐらをかいているものだから、柄のヒマワリが肥大化していた。
「タオルじゃ、オレのガンを隠しきれ……痛っ」
 桃子が丸めて投げつけたタオルは見事に亮平の顔に命中した。
「ハンカチでも十分でしょ!」
「あれ、見た?」
「み、見てないわよ」
「あれ、あれ、あれ? 赤くなっちゃって。見たんだ、そーだろ、絶対そうだ! 見たよね、ね、ね、見たよね?」
 亮平は、桃子が背けた方向にわざわざ行っては真っ赤になった桃子の顔をのぞきこんでからかった。
「見てなかったら、何でハンカチで十分だってわかんのさ」
「ほー。じゃあ、やっぱりハンカチで隠せる程度てわけね」
 亮平の言葉じりをとらえて反逆したつもりだが、当人はニヤリと笑って
「知らねえの。オレのガンは変形すんだよ」
 としゃあしゃあと言ってのけた。
「トランスフォー……痛っ!」
 とっさに投げつけたウサギのぬいぐるみはまたしても見事に亮平の顔に命中した。その瞬間、まるで祭りの屋台で景品をあてでもしたかのように、桃子の部屋のインターホンが鳴った。部屋の中から漏れてきた亮平の声を聞きつけたのだろう、女が桃子の部屋の前まで戻ってきていた。
 はっと桃子は息をひそめたが、時すでに遅しで、女に亮平が部屋にいると気づかれてしまった。亮平は部屋の電気を消し、インターホンは電源から切ってしまった。静寂はほんの一瞬だった。女は今度はドアを叩き始めた。しきりに亮平の名を呼び続けている。
「……ねえ、彼女とちゃんと話した方がいいと思うよ」
「話すって何をさ」
 暗闇の中だと、話す声も自然と小さく低くなった。
「オレ、あいつの浮気相手なんだぜ。あいつ、彼氏いんの。お互い干渉しないって約束で、大人の付き合いって割り切った関係だったのにさ。オレに彼女がいるってむこうも知ってんだぜ」
「何、その不適切極まりない関係。じゃあ、今夜ふみこまれた時に一緒にいたコが本命の彼女ってこと?」
「そう」
「ちょっと、そのコどうしたの? まさか、部屋におきざりにして自分だけ逃げてきたとか?」
「急襲されたから、よく覚えてねぇ」
「うわっ、そのコ、外の彼女に何かされたかもよ」
 桃子はドアに目をやった。女が叩くたびに、ドアは小刻みに震えた。震動は部屋の空気すらも揺り動かした。そのうち、ドアが打ち破られやしないかと桃子は不安になった。
「大丈夫じゃね? 今頃、タクシー呼んで家に帰ってるぜ。そういう女だし」
「だといいけど。血まみれでベッドに寝ていたなんて、シャレにならないわよ」
「あいつの標的はオレだから、それはないんじゃね?」
 亮平はあっけらかんと笑ったが、桃子は笑えなかった。女心と秋の空。気持ちなんて猫の目のように変わるもの。
「浮気が本気になったのかな……」
 誰に聞かせるでもなく、桃子はぽつりと呟いた。
 さらさらの黒い髪がキレイな女の子だった。いつか、アデルの「サムワン・ライク・ユー」が気になると言ってきたあの女の子だと桃子は思い出した。色が白くて一見真面目そうにみえるタイプの子だ。
「もともと、あんたのことが好きで、二番目でもいいから付き合いたいっていう思いで付き合ってたのかもしれない」
「遊びでいいって言ったのはむこうだぜ」
「言葉と気持ちが一致しているとは限らないじゃない。人間は嘘をつく動物なんだから」
 本音でトークしようぜとブツブツ言いながら、亮平はドアの向こうを見つめていた。
 ドアを叩く音は次第に弱まっていき、しばらくするとすっかり止んでしまった。諦めて立ち去っただろうかと思い、桃子と亮平とは顔を見合わせて玄関にむかった。
 ドアスコープから廊下をのぞくと、ストッキングの足の先がみえた。どうやら、女は桃子の部屋のドアに背をもたれかけ、廊下に座り込んでいるらしい。女が脱ぎ捨てたパンプスは桃子の部屋の玄関にそのままになっていた。
 廊下に投げ出された細い足はしぼみかけた風船のようだった。張りつめていた感情が足先から漏れ出ている。朝までには影も形もなくなっていってしまいそうだった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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