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あじろ けい

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なのなのな 5-5

セールの文字にひきつけられ、桃子はふらりと店内へと足を踏み入れた。新商品のマチ付きクリアファイルの試作品の打ち合わせに工場に行った帰りで、降り続ける雨をよけてデパート内を通り抜けて駅にむかおうとしていた。そのデパートと駅とは屋根付きのコンコースでつながっていて、店はコンコースのあるフロアの一角にあった。
 本格的な夏の来る前に、昨シーズンの在庫一掃を目的としたセールだろう。そろそろ夏物のスーツを新調していたいと思っていたところだと、桃子はさっそく物色を始めた。流行遅れのスタイルになってしまうが、背に腹はかえられない。
「いらっしゃいませ」
 色白で小柄な女性店員が声をかけてきた。光沢のある素材の薄紫色のシャツに、紫色のストライプの入った紺のパンツを着こなしている。ショップの服だろう。客である桃子も、似たようなスタイルのパンツスーツ姿だった。
 煩わしいのは嫌だというオーラが出ていたのか、店員はセールをやっているという案内だけをして去っていった。
 初めての店だったが、桃子の仕事着であるスーツがダーク系をメインカラーとして各種取り揃えてあった。
 桃子は、シンプルなスーツを好んで着る。会社自体は自由な雰囲気で、人に会うことが多い営業部のような部署でない限り、スーツを着なくてもいい職場だが、桃子は入社以来、スーツを着続けている。おしゃれな女性だと、小物やアクセサリーで女性らしさを演出するだろうが、桃子は指輪もネックレスも一切身につけない。スーツ自体の色味も、紺や黒、グレーといった、サラリーマン色一辺倒だ。
「お似合いですね」
 試着室から出てくるなり、色白の女性店員が鏡の中の桃子をうっとりと眺めて言った。客を褒めるのは仕事だろうが、その賞賛には嫉妬めいたものもうかがえた。
「ありがとうございます」
 桃子は照れたように笑顔を返した。シルバーグレーのパンツスーツは、背の高い桃子にこれ以上ないほど似合っていた。ほっそりした体はシャープさを増して、手足の長さがグレーの色味に強調され、さらに長くなったようにみえる。
 就職活動を始めたばかりの頃、スーツ姿で大学のゼミに顔を出したら、ゼミ仲間から似合うと賞賛された。スーツが似合うと言われて喜ぶ女はいないだろうが、何を着ても似合わないよりはましだと、桃子はポジティブに受け止めた。実際、スーツが似合うことでプラスな部分もあった。かっちりした姿が、真面目で清廉な印象を与えるのか、面接官の受けがよかった。おかげでバカなことを口にしても、洗練された冗談だとして受け流してもらえた。女らしい格好は似合わないマイナスを補ってのプラスだった。
 試着室を出ると、女店員は背の高い男と話しこんでいた。ダークブルーのスーツに白いシャツ、ピンクのネクタイをしめている。スーツの色味とスタイルはショップにある男物と似通っていた。店員なのか、それとも客なのだろうか。今時の若い男性らしく、髪は明るい色で長め、毛先が人工的にあちこちをむいていた。
 男は桃子の方を向いていた。小柄な女店員の後頭部の上に顔がはっきりと見えた。先に桃子に気づいたのは亮平の方だった。



すいません、2月中にどうしても完結させたいので、ここから日3回更新でいきます。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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