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なのなのな 5-6

「あれ、買い物?」
「それ以外に何が?」
 見ればわかるだろうと、試着したばかりのスーツを腕にかけ、桃子は足早にレジにむかった。その後を亮平が小走りに追った。
「そのスーツ、オレに買わせてよ」
 カバンから財布を出そうとするのを、亮平がさえぎった。
「この間、世話になった礼にさ」
「この間世話になったって何の話なの、リョーヘイ」
 女店員がいぶかしげに亮平の顔をのぞきこんだ。どうやら二人は親しい仲らしい。女同士が鉢合わせしたというのに、自分の部屋でボヤを出したという嘘を亮平がついたところをみると、あの時に関わっていた女たちとは別の新しい女であるらしい。
「そうね。あの時は迷惑したわ。何でボヤ出したんだっけ? 寝タバコ?」
「リョーヘイ、タバコ吸わないじゃん」
「えっと、あれだ、天ぷら作ろうとして火にかけたまま、寝ちったんだな」
「何それ。何で夜中に天ぷら? 第一、リョーヘイ、料理しないじゃん」
 女店員の疑惑が深まっていくのを横目に、桃子は必死に笑いをこらえ、財布からカードを出した。
「それ、セール対象外だけど」
 亮平に言われるなり、桃子は慌てて値札を確認した。考えていた予算をはるかに超える値段だった。
「買ってもらったほうがいいんじゃね」
 亮平はニヤニヤしている。
「てか、あんたにも買えるの」
 負けじと桃子も言い返してやった。
「社割で買えるもん」
 亮平の打ったスマッシュヒットは、桃子のゴール隅にきれいに決まった。
「ここ、オレの店だから」
「自分の店みたいに言わないでよね」
 女店員がすかさずツッコミを入れた。
「オレ、この店のブランドの営業マンなの」
「それで、社割」
「社割だと二割引きになるけど。どう? そそられるっしょ」
 勝ち誇ったかのように亮平は唇の端をあげた。悔しいが、二十パーセントの差は大きい。
「お、お願いします……」
 桃子はレジのデスクの上にあるスーツを亮平の方にむかってすべらせた。
「ハイハイ。そうこなくっちゃ」
 亮平はきびきびした動作で女店員に指示を出し、財布からカードを取り出してみせた。
「言っとくけど、この場では社割で買ってもらうけど、後でその分のお金をちゃんとあんたに渡すから」
「いいって、そんなの。オレ、あんたにはカシがあるんだから」
 翌朝まで桃子の部屋の前に居座り続けた女に、亮平とは別れるよう説得したのは桃子だった。自分に振り向かないような男に若い時の貴重な時間を無駄に費やすことはないと言うと、女は疲れたように何度もうなずいてみせ、桃子の渡したパンプスを両手にマンションを去った。その後、ようやく亮平は自分の部屋に帰れたというわけだった。
 しかし、あの時、しばらくの間亮平をかくまった桃子への貸しを返そうとする亮平が余裕の笑顔でいられたのもこの時までだった。
「リョーヘイ、リョーヘイのカード使えないよ?」
 女店員は、怒ったような口調でカードを差し出した。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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