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あじろ けい

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なのなのな 5-9

シャワーを浴びて出てくると、バッグの底でケータイが震えていた。夜中の12時近くにかけてくるのは彩花ぐらいなものだ。どうせ男について――貴一についての相談だろう。相談にはのらないと宣言した以上、電話には出まいと、桃子は無視をきめこんだ。
 しかしケータイは鳴りやまなかった。出られるはずだと言わんばかりに呼び出し音が鳴り続けた。こうなった我慢くらべだ。だが、負けたのは桃子だった。
「相談には乗らないって――」
「ごめん、起こしたかな」
 飛び込んできたのは貴一の声だった。
「すいません、先輩。彩花からだとばっかり」
 慌てて声を一オクターブあげ、桃子はベッドの上に正座した。
「夜遅くに悪いと思ったんだけど、この間言っていた手帳についてちょっと思いついたことがあって、忘れないうちに話しておこうと思って」
「アドベント手帳についてですか?」
 企画書は途中まで手をつけてほったらかしになったままだった。
「若い女性をターゲットにするという話だったけど、男でも持っていると意外と重宝するんじゃないかな。ビジネスシーンにはいろいろな締切があるだろ? でも実際には様々な事情でまもられなかったりする。立木の企画しているページ数がイベントまでの日数までしかない手帳なら、が何が何でも締切日に間に合わせてやろうとやる気になるんじゃないだろうか」
「ターゲットを男性にも広げて、ビジネスイベントにも使えるってアピールするってことですか? そうすると間口を広げ過ぎてしまって、かえってどちらの層にもうけなくなると思うんですけど」
「言われてみれば、そうだな……」
 少し前までの勢いはどこへやら、貴一はすっかり意気消沈してしまった。桃子は慌てた。
「すいません、あの別に、先輩の意見が悪いってわけじゃなくてですね」
「いや、立木の言う通りだ。ターゲットはある程度しぼらないとだな。それにビジネスがらみはあまり楽しいイベントとは言えないものな」
「二兎追うものはって先輩から教えてもらったんですよ」
「負うた子に、だな。立木はもう立派に一人でやっていけるんだな。最近は以前みたいにあまり相談もしてくれなくなったし」
 貴一に聞かれないようにとケータイを手でふさぎ、桃子はため息をついた。彩花と付き合っている貴一と話をするのが辛くて相談したくてもしないでいるのに。
「俺はもう必要ないんだな」
「そんなこと……」
「むしろ、こっちがいろいろ相談にのってもらいたいくらいだ……」
 それきり、貴一は黙り込んでしまった。相手の顔の見えないケータイでの沈黙は桃子をとてつもなく不安にする。何かをしゃべろうとするが、何を話したらいいのかわからない。今夜の貴一はいつもと様子が違う。夜中に突然電話してきたり、電話に出るまで呼び出し音を鳴らし続けたり、出たら出たで、一方的に話し続け、それも的外れな指摘をしてきたりと、いつもの明晰な頭脳はどこへやら、冷静さも欠いている……。
「先輩?」
 返事はなかった。
「先輩、聞いてますか?」
「……聞いてるよ」
 掠れるような低い声で返事があった。やはり、様子がおかしい。
「先輩、酔ってますか?」
「酔ってない……と思う。うん、少し飲んだけど、酔うほどじゃないよ」
 貴一の声に重なり、救急車のサイレンが聞こえてきた。サイレンはケータイにあてていない耳にも聞こえてきた。音が近い。
「先輩、今どこにいるんです?」
 返事はなく、サイレンの音だけが聞こえてきた。音は桃子のマンションにむかって近づいてきていた。
 貴一はすぐ近くにいるのではないか。そう思うといてもたってもいられなくなり、桃子はケータイを握りしめて、ベッドから飛び降りた。
 玄関を出たところで、危うく人にぶつかりそうになった。
 彩花だった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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