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あじろ けい

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なのなのな 6-4

着信履歴には彩花からの名前がずらりと並んでいる。留守電はすべて彩花からで、メールも彩花からのものが目立つ。だが、留守電もメールも、彩花からのものは無視し続けてきた。冷たいかもしれないが、貴一と別れるにしても付き合うにしても、どちらの決断にも桃子は関わりたくはなかった。
 はじめの一週間は毎日のように電話が鳴り、留守電にメッセージが残されていた。二週間目はメールになった。三週間目はまた電話が鳴り始めたが、毎日ではなくなった。彩花は貴一と別れたことを伝えようとしていたのだろうか。
 部屋に戻り、ケータイを手に桃子は彩花に連絡するべきかどうか迷った。今夜も彩花からの着信が履歴に残されていた。ちょうど貴一と「ペルソナ」にいた時間だ。着信履歴の時間を見てふっと息を漏らしたその時、ケータイが鳴った。
 彩花からだった。驚いたあまり慌てて手にしたケータイを床に落としそうになるのを何とかしのぎ、ためらいながらも桃子は電話に出た。
「桃子?」
 電話をかけてきたくせに、桃子が出たので彩花は驚いていた。
「もぅ。どうしてずっと電話に出てくれなかったのよ。桃子に言わなくちゃいけないことがあって、ずっと連絡してたのに」
「ごめん……」
 甘ったるい口調の彩花は責めているわけではなかったが、桃子は反射的に謝った。
「私ね、佐野さんと別れたの」
「……」
「もしもし、桃子、聞いてる?」
「うん……」
「そういうことになったから。桃子、佐野さんに告白して付き合いなね」
 眉間に皺が寄っていくのが自分でもわかった。
「どうして、そういう話になるの」
「だって、好きなんでしょ、佐野さんのこと」
「……」
「私とのことなら気にしなくていいよ。付き合っていたって言ったって、エッチしてないから」
「そういうことじゃなくてっ……」
 彩花と話していると腹立たしさがつのっていく。その場にいない貴一にも腹がたった。体の関係がうんぬんということではなくて、短くても密接だった関係が終わったというのに、何だってふたりはあっけらかんとしていられるのだろう。
「多分だけど、佐野さん、桃子のことが好きだよ」
「……何でそう思うの」
「だってね、デートしてても話は桃子のことばっかりだったもん。桃子があれした、これしたって。桃子のことは私もよく知ってるから、私、佐野さんと話していて楽しいなと思ったけど、それは話の内容が桃子のことだったからなのね。別に佐野さんとの会話が楽しかったわけじゃないの。桃子のこと以外、話すことなんてなかった。私、佐野さんのことよく知らなかったから、何話せばいいか分からなかったし、向こうも同じだったと思う。共通点もなかったし。初めは桃子の言う通りの女の子を演じて彼に合わせてたけど、それをしなくなったら、何で一緒にいるんだろうって思いはじめちゃった。同じぐらいに、彼の気持ちも冷めてきたなってわかったの。それでピンときた。佐野さんは、私の外見に惹かれただけで、中身は桃子みたいな女の子が好きなんじゃないかって。だから、桃子の言う通りに動いていた間は、仲良くしていられたんだなって」
 頭が真っ白になった。
「佐野さん本人は、桃子に対する気持ちに気づいていないかもしれない。だから桃子の方からアピールして――」
「そんな簡単にいかないって」
 感情を押し殺し、桃子はやっとのことでそう言った。
「どうして?」
 彩花の素朴な質問が桃子の感情を逆なで、桃子はとうとう言葉を失ってしまった。電車を乗り換えるように簡単には気持ちは切り替えられない。
「ねえ、聞いていい?」
「なに?」
「リョーヘイのこと、佐野さんに言った?」
「言うわけないじゃない」
「そうだよね」
 ケータイを切るなり、桃子は大きく息を漏らした。腹立たしさといらだたしさと、その他にもいろいろな気持ちがまじりあって胃の底でグツグツ煮立っている。
 片思いで苦しんだ長い年月、失恋で泣き続けた日々は一体何だったのか。やっとのことで貴一を諦めたと思ったら、今さらのように気になると言われた。まさに今さらだ。何だって今になって貴一の気持ちが手に入るのか。
 今になって――
 桃子は六〇七号室側の壁を見つめた。彩花の声は電話の向こうと壁の向こうとの両方から聞こえてきた。今夜、彩花は亮平の部屋に泊まっていくのだろう。
 引っ越そう――桃子はとっさにそう決心した。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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