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あじろ けい

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キャッチアップ 15

 責めてくれたほうがいっそ気が楽と言わんばかりの涼子にむかって、真紀は大きなため息をついた。
「わかってる。世間は、まだまだ、母親が女として恋愛することにいい顔はしないのよね。滅私奉公じゃないけれど、100パーセント子どものために生きることを強いるもの」
「子どもには母親が必要よ」
「いい母親がね。四六時中一緒にいるからっていい母親とは限らないし、仕事や何かで家を空けがちだからといって悪い母親とは限らない。要は、子どもとどんな関係を築いているかということでしょ。愛されているという自信を与えることが一番大切なのよ。涼子は誠くんを愛しているでしょう」
 涼子は大きく頷いた。何を失っても誠だけは失えない。苦しむ誠と出来るなら変わってやりたいとさえ思う。それができないもどかしさが胸をしめつける。
「男にかまけているのは、たとえ子どもを愛していてもいい母親とは言えないと思うけど」
「そうね。世間はそう言うわね。それじゃ、夫にかまけているのはどうなのかしら。私たちは独身の母親だから男となるけど、結婚している母親は? 夫にかまけていても何も言われないでしょう。それはどうして」
 涼子は言葉に詰まってしまった。雅弘にかまけていなかったから、離婚という結果になったのだ。
「確かに、女の一生では母親として子どもと密着する時期があるのは認めるわ。でもだからといって、女を捨てろと言われるのはひどいと思わない? 子どもはいつか離れていくもの。そうなった時、私たちに残っているものは何? 結婚していない私たちには何もないの。いきなりひとりきりで、子育てしていた時間よりずっと長い時間を過ごすことになるのよ。そうなってから人生のパートナーをさがそうたって、女としてはもう盛りを過ぎている。悲しいけど、これが現実よ。年老いてひとりきりにならないよう、今のうちに恋をして、人生のパートナーをつかまえておかないといけないの。子育てして、恋をして、仕事をして。女はね、忙しいのよ」
「真紀、付き合っている人がいるのね?」
 二歳年下の、病院の出入り業者だと真紀は言った。
「浩介くんは何と言ってるの? 真紀の彼のこと」
「嫌がってる。女である前に母親だろって。まるで女であることが汚らしいみたいな言い方をするわ」
「確か十五歳よね。多感な年ごろだわ」
「母親に性を感じるのが嫌なのね」
「男の子だからじゃない? 真紀が恋人のようなものだから、人に取られたような嫉妬のような気持ちがあるのじゃないかしら」
「自分は男ですらまだないのに、一人前の男と張り合おうなんて十年早いわ」
 憎まれ口を叩きながらも真紀の頬は緩んでいた。子どもの成長が嬉しくて仕方ないのだろう。同時にさびしそうな口ぶりでもあった。親離れはすぐそこまで近づいている。誠の成長に目を細める日がいつかは来るのだろうか。そうであってほしいと、涼子はむくみと発疹のひどい誠の小さな手を握った。
「真紀の言いたいことはわかる。子ども中心の生活は、子どもにとっても重荷でしかないから、子どもだけの人生を送るなってことだろうけど、私の場合、彼とのことは恋愛ですらなかった。体を重ねるだけの関係。本当に遊びだったの」
 克弥とは喧嘩別れのような形で終わったが、涼子は何の痛みも感じていなかった。恋愛はミックスドロップを舐めているようなものだ。甘いドロップばかりではない。涼子は薄荷味が苦手で甘いドロップを舐めつくした最後には薄荷味のドロップばかりが残った。恋愛の終わりは、仕方なく最後に舐める薄荷の味がする。冷たくて苦い、出来たら口にはしたくないもの。だが、克弥との恋愛の終わりに薄荷の味はしなかった。全部が甘いだけのドロップ。甘味だけの単調さに飽きただけだった。
「それも恋愛のひとつじゃないの? パートナーの探し方はいろいろよ。涼子は必要としているパートナーがどんな人なのか、わかっていないのじゃない? だから今回は間違えた。彼とは?」
「もう終わったわ」
 克弥は、涼子が修一と付き合っているものだと勝手に誤解していた。勝手に腹をたて、勝手に涼子を悪い母親だと決めつけた。何もかも、自分勝手だった。ふたりとも別れるとは口にしなかったが、少なくとも涼子は今後一切付き合うつもりはなかった。
「涼子。恋愛しなね」
 真紀の言葉に涼子は微笑み返すのが精いっぱいだった。
「誠くんのこと、遠藤さんに連絡しないとね」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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