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あじろ けい

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キャッチアップ 17

 久しぶりに雅弘に会った印象は老けたというものだった。垂れ目がちの目はますます目じりが下がり、その目じりには皺が刻まれている。小ぶりで形の美しい唇の脇にはかすかに法令線がみてとれた。十歳は年をとったようだった。若く見られがちな雅弘だから、十歳も老けこんで見えたのなら四十過ぎの年相応なのだが、涼子は違和感を覚えた。
 雅弘を思い出す時に浮かんでくるのは出会ったばかりの頃、三十過ぎても少年の面影を残した顔であるせいもあるかもしれない。短い結婚生活の間、雅弘の顔を見ていなかったということなのか。雅弘は、付き合い始めた当時、好んでよく着ていたサーモンピンクのポロシャツに麻のジャケットを合わせていた。
「来てくれてありがとう」
 誠は父親に会えて喜んでいた。入院という非常事態でもなければ会いに来なかった雅弘でも、誠にとっては父親ではあるのだ。複雑な思いで無邪気に喜ぶ誠を横目に、涼子は雅弘が見舞いにもってきたクマのぬいぐるみを枕元に置いた。
「転院させられないの? 病院が東京ならもっと簡単に見舞いに来れるのに。今日はこっちに来るのにわざわざ休暇を取ったんだ」
「やたらと動かしたりしたらいけないのじゃない」
 両親や、いろいろと世話してくれる真紀のそばを離れての東京での付き添いは涼子にとってかえって負担になるとは雅弘には考えもおよばないことらしい。東京の病院に転院できたところで雅弘が毎日見舞いに来るとは到底思えない。
 涼子は、誠について、川崎病について一通り説明した。間に差し挟まれる雅弘の質問にも淡々とまるで医者のような態度で答えた。雅弘が引っかかったのは、後遺症の動脈瘤と心筋梗塞を起こす可能性についてを話した時で、涼子も同じ話を医者から初めて聞いた時、背筋が寒くなったのを覚えている。
「心筋梗塞って、大人の病気じゃないのか。子どもがなるものじゃないだろう」
「そういう病気なのよ」
 苛立たしさを隠さずに涼子は言った。
「それで、その心臓にできる瘤ってのはどうなんだ」
「まだ瘤が出来ているかどうかはわからない。検査しないと」
「検査してないのか?」
「今はとにかく熱を下げないといけないのじゃない」
 誠の熱はしつこく、涼子を不安にさせた。
「瘤が出来たらどうするんだ」
「瘤の中に血栓ができやすくなるし、血流も悪くなるから、手術で何とかするのじゃないかしら」
「それじゃ、瘤が出来てから、出来てるかどうかの検査なんて後手もいいところじゃないか」
「そうならないよう、治療しているのよ」
 涼子は、血流を促進するために血液製剤を用いた治療を行っていると説明した。血液製剤と聞いた途端、雅弘の顔が歪んだ。
「血液製剤って、エイズや肝炎なんかで問題になったあれだろ」
「ええ。肝炎やエイズに感染したっていう報告例はないけれど、そういう問題があるから使用同意書にサインしてくれって言われたわ」
「サインしたのか?」
「したわよ。他にどうすればよかったっていうの」
 涼子の苛立ちを読み取ったかのように、誠が不安げに涼子の顔を見上げた。夜中に起き出し、夫婦で離婚について話し合っていたところに出くわしてしまった時と同じ表情をしていた。当時と同じように、涼子は即座に笑顔を作ってみせた。
「信用できないな。所詮、田舎の病院、医者だ。万が一、手術ってことになって対応できるのか? 転院、できないものなの?」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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