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あじろ けい

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キャッチアップ 18

 雅弘の見舞いから一週間後、心臓エコー検査結果が出た。最悪な結果を、涼子は身じろぎひとつせずに医者から聞いていた。男にかまけていた罰として誠が病気になったのなら、最悪のシナリオが涼子のために用意されている。どこかでそうなるような予感があった。
 誠の心臓の血管壁には瘤が出来ていた。
 涼子は雅弘に連絡を取った。検査結果が出たら知らせてほしいと頼まれていたからだった。結果を聞いて、雅弘は黙りこんでしまった。今後の治療などについて、涼子は医者から聞いたままを繰り返したが、雅弘が聞いて理解したのかはわからなかった。
「ねえ、聞いてる?」
 電話の向こう側にむかって涼子は呼びかけた。顔の見えない相手の沈黙は底知れない不安をかりたてる。相手を襲った怪物が電話回線を通して自分のところに現れるのではないかという不安。
「涼子……」
 やっとのことで聞き取れるほど、かすかな雅弘の声がした。
「俺たち、やり直さないか」
 酔ってるのと言いかけて、涼子は口をつぐんだ。時計を確認するまでもない。病院の中庭のベンチに座っている涼子の頭上では夏の太陽が照り輝いている。仕事の邪魔にならないよう、昼休みの間にと思って連絡したのだ。
 雅弘は離婚したがらなかった。涼子に未練があるようで、雅弘の頑なな態度はかえって涼子の感情を逆なでた。女との関係は涼子の妊娠中から始まったとかで、涼子が知ったのはずっと後になってからだった。雅弘がしぶしぶ離婚に応じたのは女が妊娠したからだった。女とは再婚話が進んでいたはずだがどうなったのだろう。
「涼子、聞いているか?」
 沈黙にのみこまれそうになった雅弘が今度は口を開く番だった。
「彼女とは?」
「別れたよ」
「赤ちゃんは?」
「ダメだったんだ」
 同情する気にはなれなかった。他人の幸せを踏みにじって手に入れられる幸せなどない。涼子は家族を失った。女は子どもを失った。これでお相子だ。
「お袋が、誠に会えないんでさびしがってさ。お前が浮気なんかするから離婚なんてことになったんだ。お前はバカだ。今からでも頭下げて涼子に戻ってきてもらえって言うんだ」
「……」
「お袋に言われたからよりを戻そうって言うんじゃないんだ。俺はもともと別れたくはなかったんだし」
 離婚の話し合いをしていた間中、雅弘はずっと気持ちは涼子にあると言い続けた。女が妊娠しなければあるいは離婚していなかったかもしれない。
「誠のことがあって――」
「誠のことが何だって言うの」
 涼子は雅弘の言葉にかぶせるように言った。
「お前、今学生だろ。収入もないのにどうやって誠の面倒をみていくつもりだ。仮に就職できたとして、女手ひとつで子どもを育てていくのは大変だろう。その上、誠は医者に見せ続けないといけない体になった。今の局面は乗り切ったとしても将来、倒れたり、手術ということになったら金が要るだろう。そんな金あるのか?」
 涼子は返事につまった。金銭的な面倒は両親がみてくれると申し出てくれた。真紀も何かと気にかえてくれて、どうにか誠の世話ができている。しかし、それも誠が入院しているという非常事態だからで、退院して普通の生活に戻った時、どうしていくのか、涼子は何も考えていなかった。
「誠は俺の子でもあるんだ。何とかしたいと思うのは当然だし、復縁はお前にとっても悪い話じゃないだろう」

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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