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あじろ けい

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キャッチアップ 19

「それで、遠藤さん、何だって」
 病室に戻ると、真紀が心配そうに声をかけてきた。雅弘に検査結果を伝える間、誠のそばについててもらっていたのだ。一緒に見舞いにきていた修一も、誠の相手をしながら涼子の様子をうかがっていた。
「ねえ、転院って簡単にできるものなの?」
 できるだけ修一の方を見ないようにしながら涼子は真紀に尋ねた。
「東京の病院で診てもらいたいって言ったの?」
 雅弘は転院させろとは言わなかったが、復縁となれば東京での生活が基盤になる。
「ここは総合病院だから誠くんの治療に関しては東京の病院とそん色ないから転院の必要性はないと思うけど」
「誠の見舞いに東京からこちらへ通うのは大変なのじゃない」
「そうね。家族が通うのが大変だからという理由での転院もあるけど。そういう理由なら担当医と話をすれば割とスムースに転院できるとは思うけど。でも、こっちで入院していた方がいいのじゃない? 涼子のご両親も近くにいるし、私も何かあったら助けてあげられるし。東京の病院じゃ、涼子ひとりだよ」
 そうねと言って、涼子は話を打ち切った。

「急に転院がどうとか言い出すから何かあるなと思ったけど、そういうことなの」
 三日後、ひとりで見舞いにきた真紀に、涼子は復縁をもちかけられたと打ち明けた。
「それで、どうするの?」
「まだ返事はしてない。よく考えておいてほしいって言われて」
「それにしても急な話よね」
「もともと離婚したくはなかったらしいし、誠のこともあって――」
「こういう言い方は何だけど、お金で涼子を釣って誠くんを取り戻そうとしているように感じるけど」
「実際そうなのよ」
 真紀に向かって涼子は苦笑いを浮かべてみせた。
「彼、子どもは好きなの。結婚してすぐにでも子どもが欲しいと言っていたくらいだから。私のことは、多分、子どもの面倒をみてくれる人間だぐらいにしか考えていないと思う。彼女の子がダメにならなかったら、誠のことがあったにしても、私とヨリを戻すそうなんて考えなかったと思うわ」
 涼子はベッドの誠を見やった。熱の下がった誠は見た目だけならすっかり元気になってベッドの上にじっとしていられなくなった。枕を山に見立て、家から持ってきたラジコンのダンプカーをその上に走らせて遊んでいる。
「でも私にとっては悪い話じゃない」
 涼子は雅弘の言葉を真似て繰り返した。
「遠藤さんに気持ちはあるの?」
 真紀の質問に、肯定的な返事はできなかった。涼子の沈黙を、真紀は否定の意味でとらえたらしかった。
「ATMだと思って我慢するつもり?」
「誠のためよ。それに、彼は誠の父親でもあるんだし」
「それでいいの? 前にも言ったと思うけど、子どもといる時間なんて長い人生の間でわずかなんだよ。誠くんが自立したら、涼子は遠藤さんとふたりきりになるんだよ。気持ちのない人と一緒にいられるの?」
 誠が二十歳になる時、涼子は四十九歳だ。寿命まで生きるとしても約三十年。誠と過ごす二十年よりも長い時間を雅弘とともに歩む。考えるだけでもぞっとする。
「涼子、何だか自分を罰しているようだわ」
「罰せられるだけのことをしたわ」
「付き合っていた彼のこと?」
 母親だということを忘れて男に走った。その罰として、愛情のない男と一生ともに過ごさなければならない。だが、その罰を甘んじて受け入れたならば、誠は十分な治療を受けることができる、大学にだって進学させてあげられるかもしれない。
「お金は大事だわ」
「それはそうだけど……」
 シングルマザーの真紀だからお金の重要性は痛いほどわかっているだろう。金がすべてではないともわかっていながら、真紀はそれ以上何も言わなかった。
「学校、どうするの?」
「休学の手続きを取ったわ……」
 女手一つで誠を育てていこうと通い始めた栄養士専門学校だったが、誠の入院が延びるにつれ、通うのは無理だと判断した。今、誠は母親を、涼子を必要としている。勉強はいつでもできる。しかし、誠のそばに寄り沿っているのは今しかできない。決断に迷いはなかった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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