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あじろ けい

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キャッチアップ 24

 修一は、同じ病院の六階、整形外科の病棟に入院していた。
 大部屋の窓側のベッドの上で、脚にギプスをした姿で眠っていた。いつも涼子を見つめてくれている目が固く閉じられている。
 窓からは誠の病室から見えたものと同じ景色がより高い位置から見えていた。涼子は修一を起こさないよう、傍らの椅子に腰かけた。
 しばらくぶりに人に会うと、記憶の顔立ちとのずれに戸惑う。数週間ぶりに目にする修一は、額に負った傷が痛々しいせいもあるが、顔半分が濃い髭に覆われてまるで別人だった。もともと老け顔だったが、さらに十歳は年をとってみるように見えた。
 真紀の話によれば、修一は意識不明の状態で倒れていたところを駐車場で発見された。その日、真紀と修一とは真紀の運転する車で誠の見舞いに訪れていた。雅弘と鉢合わせになった日だ。
 雅弘に気をつかって早々に病室を引き上げた後、二人は喫茶店で話し込んでいた。そろそろ帰ろうかと駐車場にむかおうとして真紀は喫茶店に忘れ物をしたと気づき、修一には駐車場で待っていてくれと言い、引き返した。忘れ物の傘を持って駐車場に戻ったところ、入り口付近で倒れている修一を発見した。額がざっくり割れて出血がひどかったのだという。意識はその時点ですでになかった。真紀は慌てて救急に運ぶよう手配した。
「倒れたのが病院の駐車場でよかったわよ」
 真紀が看護師であることも修一には幸いだっただろう。修一はその場で入院させられたということだった。 
 修一は脳震盪を起こしていた。何らかの原因で倒れ、頭を強く打ったらしく、額の傷も打った時に出来たものらしい。らしいというのは、修一本人が何が自分の身に起きたのかを覚えていないからだった。
 真紀は、修一は駐車場で事故に遭ったのではないかと推測していた。鎖骨と大腿骨を骨折、肋骨にはヒビの入った修一の怪我は、額の傷も含めてすべて体の左側に集中していた。右側から来た車に気づかずにはねられたというのが真相じゃないかと真紀は睨んでいる。
 だが、駐車場内だからとスピードを落として走っているはずの車にはねられて、意識を失うほどの大怪我をするだろうか。修一をはねた車は駐車場内にもかかわらず、かなりのスピードを出していたのではないのか。
 運悪く事故に遭ったとは、涼子は思えない。
 あの日の雅弘は激昂していた。復縁の話を断られたうえ、父親失格だとまで言われ、怒りをあらわに病室を後にした。その直後に修一と出くわしていたとしたら……。
 涼子の推測を裏付ける証拠は何もない。「事故」に遭った修一には当時の記憶がなく、目撃者もいないようだった。真紀によれば、脳震盪を起こした場合、その前後の記憶が飛んでしまうのはわりとあることらしい。何かのきっかけで思い出すことはないのかと真紀に尋ねると、思い出すかもしれないし、一生思い出さないかもしれないという答えが返ってきた。
 仮に思い出したとしても、修一は真実を語らないだろうという気がする。もしかしたら記憶がないと言っているのは嘘かもしれない。涼子には事故については何も知らせるなと真紀に口止めしたのは修一らしい気遣いなのだろう。
 涼子は額の傷の縫目を数えた。七針。傷痕は残ってしまうだろうか。汗で額にはりついた髪を、涼子はそっとぬぐった。あっと小さく声をあげて、修一が目を開けた。
「ごめんなさい、起こしちゃったわね。顔見たら帰るつもりだったんだけど」
 目を何度かしばたかせ、修一は髭だらけの頬を緩めた。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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