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キャッチアップ 26

「早く元気になってください」
 たわいもない見舞いの文言を目にして、涼子は軽い眩暈を覚えた。花瓶のガーベラを目にした時と同じ感覚だった。真紀は、花束を手にするくらいなら、一本でも多くポン酢の瓶を持ってくる人間だ。
「誰かお見舞いに来たの?」
 修一の顔を見ずに涼子は尋ねた。
「会社の連中。ギプスにいろいろ何か書いてあるだろ? 人が動けないのをいいことに、いろいろ好きなこと書きやがってさ。そうそう、辰雄も嫁さん連れて来てくれたんだ。そうだ、小原、ちょっと頼んでいいか?」
「何?」
「辰雄がギプスになんて書いたのか、見てくれないかな。あいつ、わざと俺に見えない場所に書いたんだ。書いている間中、ニヤニヤしてたから、絶対、まずいこと書いているに違いないんだ」
「どこなの?」
「足の裏」
「それは見えないわね」
 涼子は指先を天井にむけている修一の左足の裏側にまわりこんだ。
「なあ、何て書いてある?」
「ええとね。『看護師さんへ こいつはヘンタイでエロいヤツなので気をつけてください』だって」
「あの野郎! 退院したらタダじゃおかねえ!」
 顔を真っ赤にして怒りを露わにする修一にむかって、涼子は笑顔で右手を差し出した。
「サインペン、ある?」
「あるけど?」
 修一は首から上だけをサイドテーブルにむけた。涼子はサインペンを手に、再び修一の足の裏にまわった。
「何すんだ?」
「かわいそうだから、タッちゃんの変なメッセージを消してあげる」
「おお、ありがとう!」
 修一には、消すといった辰雄のメッセージはそのままに、涼子はその下、シーツに埋もれて看護師も他の見舞客にも見えない場所に、修一にむけたメッセージを書きつけた。ペンの走る音がキュッキュと鳴る。その間、何も知らない修一は上半身の動く部分を妙にくねらせていた。
「なんか、くすぐったいな」
「ギプスしてるんだから何も感じないでしょ」
「そうだけどさあ」
 書き終えても、修一は何だかむずがゆさのすっきりしない顔でいる。
「なあ、本当に消してくれた?」
「消したわよ」
「ペンの走らせ方が、何か書いているみたいだった」
「そう? 気のせいよ」
 涼子はとぼけてみせた。
「早くギプスが取れて退院できるといいわね」
 そう言い残し、涼子は病室を後にした。ギプスの取れるその日、修一は涼子のメッセージを目にすることができるだろう。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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