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あじろ けい

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キャッチアップ 最終話

涼子は黙って頷いた。
 自分の気持ちを伝えるのに相合傘を使ったのには、真紀との思い出話がヒントになっていた。中学時代、修一が涼子に思いを寄せていたと真紀は話してくれた。修一が真紀に恋の話を打ち明けるとは考えられなかったので、涼子はなぜわかったのかと尋ねた。
「流行っていたでしょ。黒板とか掲示板に好きな人と自分の名前を並べて相合傘を書くのが。一種の告白みたいなものだったけど。山下くんとも、相合傘に名前を書かれたことがきっかけで付き合い始めたんだよね」
 朝、登校したら教室の黒板に、涼子と孝輔の名前の入った相合傘が書かれていた。クラスメートに散々からかわれながら、まんざらでもない気で涼子は大輔と付き合い始めたのだった。
「あの相合傘ね、最初は涼子と都筑くんの名前だったんだよ。少なくとも私が見た時は都筑くんの名前だった。朝礼の直前には山下くんの名前に変わっていて、あれって思ったんだけども」
 真紀から昔物語を聞かされた涼子は、修一のギプスに自分と修一の名前を連ねた相合傘を書いた。修一になら意味がわかるだろう。だが、ギプスの取れた修一からは連絡がなかった。
「人を好きになる気持ちって不思議ね。いつもの風景に出現した見慣れない物のように、ある日突然、ああ、私はこの人が好きなんだって気づくけど、きっとそれまでもずっと目にしていたものなのよね。ただ、気にとめていなかったというだけで」
 涼子の目は車窓の景色を追っていた。九か月の間に変わったものもあれば、変わらぬものもあった。
「今も昔も、人を好きになるということがどういうことかよくわからない……。中学時代、山下に小原をとられて悔しかったけど、何もできなかった。本当に小原のことが好きなのかもよくわからなくなった。こっちに戻ってきてるって聞いて、バスで見かけた時、やっぱり好きだって思ったけど、どうすればいいのかわからなかった。誤解してほしくないんだけど、小原に好きになってもらおうとして誠くんに取り入ったわけじゃない――」
「私だって……。誠がなついたから、都筑くんを好きになったわけじゃない。誠が都筑くんに会う前に、私はあなたを好きになっていた」
 バスは商店街近くのバス停で停車した。買い物帰りの主婦と老人夫婦をおろし、バスは発車した。涼子が降りるバス停まではあと五分もない。
「ずっと小原が好きだった。中学の頃から、ずっと小原だけを見てきたんだ――」
 左頬に修一の熱い視線を感じた。バックミラー越しではない視線の強さは増していた。
「小原、俺と付き合ってくれないか」
 修一の手が、膝の上の教科書にそえた涼子の手を握った。
「中学生みたいな告白ね」
 そう言うと、修一は照れたように笑った。オヤジと揶揄された中学時代とそっくり同じな笑顔だった。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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