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あじろ けい

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花嫁の父 6-1

 ―「娘と直接話しがしたい」
 槙原はスメラギに頭を下げた。灰色の頭頂部をみつめながら、スメラギは黙ったままだった。
 梅雨の時期だというのに、じんわりと湿っているはずのスメラギ探偵事務所にはひんやりと乾いた空気が漂っている。槙原のせいだ。霊が存在していると空気が凍りつく。スメラギは慣れたものだが、袴姿の美月は両手に息を吹きかけて暖をとるほど震えている。
「花嫁姿はもういい。それより、娘の笑顔をみて成仏したい」
 槙原は自分が見てきたことの一部始終をスメラギに語った。
 裕子が水島のプロポーズを断ったこと、その理由、水島の母親とのこと…。
「このままでは、娘は死んだも同然だ。あの子は昔からそうなんだ。自分の気持ちは抑えて、人にあわせてばかりだ。
水島くんの母親に言い返したいこともあったろうに、水島くんに言ってしまいたいこともあっただろうに、言えずにいて……。そんな娘をおいて、とてもじゃないが、あの世には逝けないよ……」
 自分がまだこの世にとどまり、家族のそばにいるのだと気づいてもらおうと、トースターを動かしたりしたことを、槙原はスメラギに打ち明けた。妻の好江は何かを感じているようだが、槙原の霊の存在を確信するまでには至っていない。
「俺が、あんたはまだ家族のそばにいるって言っても、美月にのって娘と話をしたとしても、娘さんたちは信じてくれないぜ」
 ようやく開いたスメラギの口から、白い息がたなびいた。
「人は目にみえないものを信じない。見たいものだけを見、聞きたいことだけに耳を傾ける。霊の存在を信じない人間には、何を言おうと、その心には何も届かない。それでも、おっさん、話をするかい、話をしたいかい?」
 スメラギの鋭い目が槙原に選択を迫った。槙原もまた、この世で唯一言葉を交わすことのできる人間、スメラギを射るように見据えた。
 槙原よりずっと若いスメラギだが、まるで人生の荒波を潜り抜けてきた老人のようにみえるときがある。人外のものを見てしまうというのは並大抵の精神力では耐えられようもなく、生まれついてから霊をみてきたという彼は、本人の意思に関わらず、強い精神の持ち主にならざるを得なかったのかもしれない。霊と人との間(はざま)で生きるスメラギという男は、人間の目には見えないものを見てしまうせいか、人の本質そのものを見抜いてしまっているようなところがある。
 死んで自分自身が霊となったからこそ、槙原も霊の存在を信じ、スメラギの霊視能力を信じることができるが、生きていたときにスメラギに出会っていたとして、はたして彼の言う能力を信じただろうか。
 裕子は、父の霊がそばにいるのだと信じてくれるだろうか……。
「…今のままでは…」
 槙原は不安ながらも、裕子と直接話してみようと決心した。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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