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あじろ けい

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綿帽子と丸メガネ 2-2

 その日は授業どころではなくなり、騒ぎを起こした張本人のスメラギは当然として、スメラギに殴られ続けて病院送りとなったひとりを除いたいじめグループ全員と美月までが生徒指導の角田と担任とに呼び出された。
 校長室脇にある来客用の応接室は、別名「仕置き部屋」と呼ばれていた。呼び出された親ともども、校長から説教される場所だからついた名だったが、美月たちは今その応接室に、校長、担任、角田の3人の大人を前にしていた。
 応接室というだけあって、ソファーは革張り、壁には学校行事を撮った写真が飾られている。飾り戸棚には、部活動か何かで獲ったとおもわれるトロフィーがいくつも並べられていた。
 校長、担任、角田に続いて応接室に入った一行は、何も考えずにソファーに座ろうとして、角田に「何座ろうとしてんだ、お前ら、客じゃねえんだぞ」とたしなめられ、その場に立たされた。
「で、何があったんだ」
 角田が口を開くなり、スメラギと美月を除いた他の生徒たちが一斉にしゃべりだす。
「おい、一人ずつ」
 最初にスメラギにウサギの肉をおしつけられた生徒が、スメラギがいきなり殴りかかってきたのだと言った。
「そうなのか」
 角田はスメラギにたずねたというのに、他の生徒たちが仲間の口車にのって、そうだとわめきたてる。
「うるさい、ちょっと黙ってろ! 俺はスメラギに聞いているんだ!」
 角田に怒鳴られて、しぶしぶグループの連中は口をつぐんだ。スメラギに追いかけまわされていたときには、泣きじゃくっていたくせに今はにやけた笑いを浮かべている生徒もいる。
「で、どうなんだ、スメラギ」
角田の声がうってかわって柔らかくなった。職員室では耳が割れるばかりの大声でスメラギを説教しているのに、今日に限って、まるで物心つかない幼い子どもに話しかけるような態度だった。
「なあ、スメラギ。俺はいつもいっているだろう。からかわれたからって殴るのはダメだって」
「……」
「力に訴えるな、ぐっとこらえろと言ってるだろ?」
「……」
「こらえられないほどのことがあったのか?」
「……」
 スメラギは黙ったまま、直立不動の姿勢を崩そうとしなかった。その視線は窓の外に向けられている。その光景は、放課後の職員室でのものとまったく同じだった。鬼と恐れられ、角田(かどた)という本名だが、鬼になぞらえてひそかに角(つの)田とよばれている角田が、淡々と諭す口調だけがいつもと異なった。
「ウサギを殺したっていう話は本当? 殺したのはスメラギくんなの?」
 若い女の担任が問いただす。実際には30を過ぎているらしいが、見た目は教育実習生かとおもうほど若い。入学以来、問題ばかり起こしているスメラギに手をこまねいていたが、今日は角田も校長もいることだし、ここは担任らしいところをみせつけないといけないとでもおもっているらしい。キンキンした甲高い声が耳にうるさい。
 スメラギが黙っているのをいいことに、いじめグループの生徒たちはウサギ殺しもスメラギのせいにし始めた。
 ウソだ、スメラギはみんなに見捨てられたウサギをひとりで面倒をみていた。殺すはずがない。殺したのはいじめグループの連中だ。スメラギの大事にしているものをめちゃくちゃにしてやりたかったんだ。まったく、命を何だとおもっているんだ ― 美月の喉元が熱くなった。
「先生っ!」
 こいつらウソをついていると言おうとしたそのそばで、後ろ手にしたはずのスメラギの手が美月の手首をきつく握っていた。まっすぐに窓の外のキンモクセイの青い葉だけをうつすその目は、何も言うなと美月に命令していた。 
「何、美月くん?」
「いえ……」
「お前、何か知ってるのか」
 身を乗り出した角田に問いかけられても美月は首を横に振るしかなかった。手首を握るスメラギの力がだんだんと強くなっていた。この先一言でも口をきいたら、スメラギに手首を捻り折られそうだった。
「美月くん、あなた、学級委員でしょう」
 それなのにこんな騒ぎを起こして……担任はそう言いたかったらしい。だが、はっきりとは言わず、「どうしたの」「何があったの」を繰り返すばかりだった。
 美月は何も言えなくなってしまった。あらいざらい、何もかもしゃべってしまいたい。だが、何から話せばいいのか。スメラギがウサギの面倒をみていたことか、いじめグループがスメラギの白髪をからかっていたことか、母親を亡くした複雑な家庭事情のことか。言葉がみつからず、文脈がうまくまとまらない。そのまま口をきけば、ただただ叫びだしてしまいそうだった。
「何だ、美月、お前までだんまりか……」
 角田は深いため息をついてあきれていた。
 結局、親たちが呼び出されるまで、美月とスメラギはだんまりを決めこみ続けた。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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