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あじろ けい

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綿帽子と丸メガネ 3-1

 むかえにきた母親は、美月の左目の痣をみて、ひっくり返りそうになった。だが、何があったのかとか誰にやられたんだとか、余計なことは一切聞かず、家に連れて帰えるなり湿布を施してくれた。父親は美月の顔をみて「派手にやったな」と言って苦笑いを浮かべるだけだった。
「父さん、これ」
 夕食のあと、父の書斎を訪れ、美月は紫水晶のレンズを差し出した。教室で暴れまわっているうちにスメラギが落としてしまったとおもわれるメガネを、騒動のあと、拾っておいたものだった。
 レンズは傷がついているだけだったが、メガネのフレームはたとえ形状記憶合金だったとしても完璧な元の姿に戻るのは難しいだろうとおもわれるほどの歪みようだった。
「少し磨かないとダメだね、これは」
 父はフレームから外したレンズを磨き始めた。
「拓也くんと何かあったのかい?」
「……」
 ためらったものの、美月は学校であったことをすっかり話してしまった。スメラギが可愛がっていたウサギを殺されて逆上して暴れまわったこと、以前からのスメラギに対する嫌がらせやいじめのこと。
 父はレンズを磨く手を動かし続けながら、しかし一切の口をはさまずに美月の話を聞いた。
「あの子はねえ、少し変わってる。外見のことじゃないよ」
 父は、スメラギの白髪は生まれつきだと続けた。
「普通の人間とは違う。言ってる意味はわかるね?」
 正座する足首にあたる水晶の数珠を、美月はぐっと押さえた。
 富士野宮神社の宮司をつとめる美月家の女は、代々、霊媒体質に生まれつく。だが美月の代には、姉を通りこし、美月に出た。その前は父の姉、美月の叔母が霊媒体質に生まれついている。小さな妹たちがその体質を受け継いでいるかどうかはまだわからない。
 美月の霊媒体質に最初に気付いたのは姉だった。物心つきはじめてからの美月の様子がどうもおかしい。変なことを口走ったり、人が変わったようになったり、感情が一定しない。姉はすぐに両親に訴えたが、子どもには情緒不安定な部分もあるからと見過ごされてしまっていた。そうしてようやく事の重大さに気付いたのは、美月が6歳になったころだった。
 霊をその身に取り込んでしまわないよう、美月のために水晶の数珠が作られた。肌身離さず数珠をつけておくようにと言われ、美月は普段は左手にしている。だが、中学にあがってバスケ部に入ったため、今は左足首につけて、靴下で隠している。
 バスケの練習の邪魔になるからというのが理由だが、人目につかないようにというのが本当のところだ。スメラギの白髪やメガネと同じだ。少しでも人と変わったところは隠して、普通の人間にみえるようにしておかなければならない。“普通”でない人間は、忌み嫌われ、迫害の憂き目をみるのだから……。
 スメラギが何を聞かれても黙っていた理由がわかった気がした。何を言っても信じてもらえないと、スメラギは知っているのだ。ウサギを殺したのは、一見真面目そうにみえるいじめグループだと言ったところで、銀髪に染めているような(スメラギの白髪は生まれつきであるが、知らなければ“染めている”という誤解される)不良がウソを言っているとしか思われないと、見透かしているのだ。
 昼間、スメラギの白髪頭をみて眉をしかめた親たちの顔が浮かんだ。スメラギの何を知っているというわけでもないのに、すでに彼らは、スメラギを問題児として見ていた。校長も担任もだった。騒ぎを引き起こしたのはスメラギだと決め付けていた。話を聞くふりをして、その口ぶりには、スメラギを悪者にして、さっさと騒ぎを収拾してしまいたいという大人の狡さが見え隠れしていた。それがわかっているスメラギは、黙ることで、無言の抵抗を貫いたのだ。
 だが、学級委員の美月が事情を説明すれば、校長も担任も、スメラギのほうがいじめられていたと信じたかもしれない。少なくとも、何かを勘付いていたような角田は、美月が何か言えば、その言葉を信じてくれただろう。それなのに、スメラギはなぜ、美月にもだんまりを強要したのだろうか……。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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