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あじろ けい

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第3話 もうひとつの足音

(私だって、その気になったら料理ぐらい!)
 野菜の入った太一のレジかごの緑の山が目にやきついている。奈々子は、ポテトチップスやクッキーをもとあった棚にひとつずつ戻していった。
 かわりにレジかごに投げ込まれたのは、フルーツやヨーグルト、サラダ用にむけばいいだけのレタスとトマトときゅうりだった。料理というほど手間がかかる代物ではないが、スナックより健康的な印象だ。
 今ならレジかごを見られても恥ずかしくない、いやむしろ見てもらいたいくらいだと、奈々子は太一を探した。頭ひとつ飛びぬけている太一はすぐに見つかった。太一は鮮魚売り場で魚を品定めしていた。
 そういえば、魚を最近食べていない。サバの味噌煮が食べたいとふとおもった奈々子の喉がごくりとなった。自分でつくるとなると手間だが、惣菜売り場にいけば出来合いのものが手に入る。だが、惣菜売り場は鮮魚売り場のすぐ隣だった。
 出来合いのものなんかを買ったりしたら、太一に料理のできない女というレッテルを貼られる。ただでさえ、カップ麺を大量に買い込もうとしたところを見られてしまっている。
 魚を手にとる太一を恨めしげに、奈々子はレジへむかった。
 途中、低カロリーのカップ麺だけがまだレジかごに残っていると気付いた奈々子は、カップ麺のあった棚へと引き返した。
 元あった場所へ戻そうとしたが、手が届かない。
 ふいに太一の顔を思い出した。
 カップ麺を奈々子に渡そうと間近に迫った太一とは、まともに目があった。切れ長の涼しい目もとだった。目元がはっきりわかるほど、男性の顔を間近にみることはめったにない。あるとしたら、恋人とキスをする時ぐらいなものだろう。あの時、太一は、まるで奈々子にキスを迫るかのように顔を近づけてきた。
 ドギマギするのと同時に、あっと、奈々子は声にならない声をあげて、額をおさえた。
 週末だし、近所に買い物に出かけるくらいだからとメイクはしていない。眉毛のない顔を、よりによって太一に見られてしまった。
(見られた、かなあ……)
 太一の眉は黒々として立派だった。
(見られたよねえ……)
 奈々子は前髪をはたき、今さらながら、ない眉を隠した。



 スーパーからマンションまで歩いて15分ほどの道のりを、奈々子は急いだ。マンションの近くにはコンビニもスーパーもあるが、少し歩く距離にあるスーパー、横綱に通うのは何といっても他にくらべて品物の値段が安いからだ。
 スーパー横綱では、採算あうのだろうかと心配になるほど、食料品から日用雑貨にいたる物が安く売られている。いつも大勢の客でごったがえしているが、この日は週末とあってレジには行列ができていた。人ごみを避けて夕方に行くようにしている奈々子だが、それでもどのレジも混雑していて、レジの行列を突破するのに時間がかかってしまった。
 太一がいつまでも惣菜売り場そばの鮮魚売り場にいるので、奈々子は惣菜を買い損ねて機嫌が悪かった。まさか同じ会社の後輩の太一が、同じスーパーにいるとは思わなかった。たぶん近所に住んでいるのだろう。太一も常連客のようなら、もう横綱では買い物できないなあと奈々子はがっくり肩を落として夜道を歩いた。
 つるべ落としの秋の夜はあっという間に訪れる。すっかり日の暮れた夜道をひとり歩いているはずだったが、奈々子は耳ざとくもうひとつの足音を聞いていた。
 足音は、リズム正しく奈々子の後をつけている。
 奈々子は、ほんの少し、歩くスピードをあげてみた。もうひとつの足音も少しテンポをあげて奈々子を追ってきた。
(まさか、痴漢!?)
 夏至を過ぎて日が暮れるのがはやくなってから、できるだけ夜道をひとりで歩かないようにしていた奈々子だったが、この日は思いがけず太一に出会って動揺したせいで、夜は避けて通る近道を歩いてしまっていた。
 近所の人間しか通らないような小さな道で、その道を通るとスーパー横綱まで10分とかからない。だが、夜には人通りが絶えてしまい、明かりといえば、近隣の家から漏れるものぐらいで、薄暗く、気味が悪い。人がやっとすれ違えるぐらいの細い道で、こんなところで襲われたら、ひとたまりもない。
 奈々子は歩くスピードを速めた。約50メートルの近道を抜ければ、広い通りに出る。住宅街だが、街灯もあり、声を上げれば誰かに聞こえる。
 奈々子は、目指す先に小さくみえてきた街灯の明かりを目指して急いだ。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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