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あじろ けい

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渡せなかった手紙 2-5

 地獄では自分が犯した行いと同じことが、決められた年数の間、くりかえしくりかえしその身に起こる。殺人を犯せば自らが獄卒たちに殺され(しかも自分が行ったのと同じ方法で!)、火を放って人を殺めたのであれば自らも焼き尽くされる。焼き尽くされた後にはまた元通り生身の体に戻って再び灰になるまで焼き尽くされる。しかも死ぬことなく、灰になるその瞬間まで苦痛を味わうのだ。
 それはまさに地獄だった。
 血の池も針の山も、煮えたぎる大釜もないが、まさしく地獄に違いない。
ありふれた都会の街角で、殺人、強盗、放火…日常の世界では犯罪とされる行為がいたるところで行われている。警察がかけつける様子もなく、獄卒が際限なく罪人を苛む陰惨な光景だけが延々と続いている。
 ひっきりなしにあがる悲鳴と、すえた血の臭いにスメラギは吐き気をもよおし、近くのビルの陰に駆け込んだ。
「あんた、大丈夫かいな?」
 柔らかな女の声だった。
「しっかりしいや」
 情けなくも女の肩につかまって起き上がろうとした瞬間、女はスメラギを突き飛ばし、スプリンター顔負けのスピードでビルの谷間へと消えていった。
「なっ…! 」
 尻もちついた瞬間、ジーパンのポケットに入れてあったはずの財布がないのに気付いた。シャツの胸ポケットに入れておいた手紙もなくなっている。
 さっきの女だ! やられた、スリだ!
 追いかけようと腰を浮かせた瞬間、2、3メートル先で女の悲鳴があがった。
 夜摩が女の髪を引き摺って戻ってきた。
「盗(と)ったもの、返しいや」
 夜摩は女をスメラギの目の前に、雑巾でも叩きつけるように投げ出した。
女は財布をしっかり抱えたまま
「私のもんじゃが」
 と言い張った。
 年は40ぐらいだろうか、血走った目を見開き、額にはトタン板の波のような皺がより、乾いてひび割れた唇はかすかに震えている。
 女は鬼籍データベースでその写真を確認した宮内小夜子だった。
 喉元から胸にかけて茶色の沁みのあるブラウスの胸に抱えた財布の陰に手紙の角がのぞいている。財布は彼女のものではないが、手紙は彼女、宮内小夜子宛のものだ。スメラギが自分宛の手紙を持っていると知ってとっさに抜き取っただけで、財布はついでに盗られたものかもしれない。
「なあ、財布は返してくれないか。手紙は持っててくれてかまわないから」
 と言い終わるか終わらないうちに、夜摩が財布ごと手紙を女から取り上げた。女は金きり声をあげ、手足をじたばたさせ、「わしのもんじゃ、返せ」と何度も叫びながら夜摩に飛び掛っていった。
「手紙は皇拓也という男から宮内小夜子という女あてのもんや」
「わしが、その宮内小夜子や」
「皇拓也という男を知っとるんか」
「知っとる、知っとる」
「柏木孝雄の知り合いの男やなあ」
「そやそや」
 手紙はもちろんスメラギからのものではない。スメラギは宮内小夜子を知らないし、宮内小夜子がスメラギを知っているはずもない。柏木孝雄の名前にも、夜摩の話に合わせているだけで、特に目立った反応はない。恋人だった男の名前に無反応でいられるものだろうか。
「この嘘つきがっ!」
 夜摩の怒号が飛び、女はひっくり返った。
「嘘つきがどうなるか、わかっとるやろな」
 夜摩に呼びつけられた獄卒は、泣き喚く女の口を裂き、素手で女の舌を引き抜いた。たちまち鮮血がブラウスに散り、新たな沁みを作った。

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

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